クライシス
「そうして俺は、『イド』になった。あの時、奴に拾われなければ。そう、考えない日は無かったが…」
「それは駄目。
そうだったら、私イドに会えなかったじゃない」
「……ハ、そうだな」
「ていうか今更だけど、イドって何歳?
今聞いた話だと、本当はちっさいの?」
「……まずする質問がそれか。
まあいいが…それは意味のない質問だろう。そもそも覚えてないから、答える事も出来ん。それに此処でお前に監禁されてからどれくらい経ったかすら、俺は数え切れてないんだ」
「なるほど、そっか。
確かに、イドが何歳とか関係ないや。
そもそも、それで言うなら私、おばあちゃんだ」
「…まあいい。話を続けようか」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
少年がまず教えられたのは言葉。
ただ、それはとても、とても早く済んだ。
イド自体、飲み込みが早かったこともある。果たして混ぜられた何かの力がその智慧にも貢献したのかもしれない。
何より、何の知識の蓄えも無いまっさらな脳はからからの雑巾のように知識を吸いとった。
とかく最低限の知識を身につけ、最低限まともなコミュニケーションを取ることが出来るようになったのは、わずか数十日程度の出来事。異例と言うにも似合わない程の短さであったことに間違いはない。
「優秀だなァ。いや、まったく嬉しいぜ。
ナナなんて、最初覚えようともしなかった」
「あんたの教え方が良いからだ。
感謝してるよ、ゴイ」
「応。ただどうにも喋り方がニコに似ちまったのが残念だ。可愛げが無いったらありゃしねェや」
「む…気に食わないようだったら改善する」
「ああァ違ェ違ェ!冗談だっての!
カハハ、そういうのは後から学んで行くかね」
ただそれでも、会話とはあくまで最低限。
難しい言葉だったり、冗談だったり、何より自身の感情の揺らぎとかそう言ったものはまるで不得手で。
それらがわからないで頓珍漢な事を言っては、無関心なニコを尻目にゴイとナナに笑われる。そのような事を何回も繰り返していた。
ただその笑いには不思議と悪意は感じず、イド自身それは意外と心地のよいものと思っていた。
そんな、ある日。武器を振り回す事にも幾らか慣れねばならないと、短剣を握っていた時の事だった。急にゴイが肩を掴み、ぐいと有無を言わさぬ強引な声で、言った。
「元気そうで何より。突然だが実地試験の時間だぜ。
30秒内に出る準備をしなァ」
相わかったと、言う通りに事を進め20秒で必要なものを揃え、唯一そこからのみ外出が認められた『出撃口』で他兵士に乱雑なボディチェックを終えてから、外に出る。
「よォ、時間通りで感心」
そこに居た人物が声を掛けたからこそ、イドはその人物がゴイである事を認識できた。それほど、普段の様子とは異なる見た目。そして、纏う雰囲気。
びりびりと、近づくだけで肌が粟立つようなほど張り詰めたそれは、反射的にイドの拳に力を込めさせた。
全身を重く白い鉄に包んでいる騎士姿。そして鉄のバケツをそのまま被ったような無骨な兜。乱雑に、目の当たりにだけ穴が開けられたそれは、無骨を通り越し、首切り人じみた不気味さだった。
「要点から行くぜ。
今回殺しに行く不死はライカンスロープ。まあ、いわゆる狼男だァな。こいつの特性は童話にある通り…って、イドは知らねェか。えーっとだな」
「いや、学んだ。
不死者共通ではあるが、人並の知能に獰猛な性質。
血を撒き散らし、敢えて魔物を集める群れの習性。
喰い殺した人間を自らの同族に変える繁殖法。
故にライカンスロープの討伐は、優先度が高いと」
「おお、その通り。そこまで詳しく無くて良かったが、知るに越した事は無い。イドは偉いなァ。
…ま、とにかく着いてこい」
「わかった」
特に質問も無く、ただ頷く。その様子を見てゴイは、その兜の奥故によく分からなかったが、満足そうに頷いた気がした。
そうして、早馬に乗りながら走る。
少年は当然に馬に乗ることも初めてだったが、イドが駆る馬はただ心を読み取るかの如く、意のままに動いた。
そっと、頭を撫でてやる。
すると馬はそれに反応するように首を振るう。
嬉しそうにいななき、更に速度を増した。
「ま、安心しな!増える不死者っつってもバンパイアみてェな理不尽な敵じゃあ無い。流石にオレらにゃ荷が重すぎらァな。そういうのはニコ兄が、大抵やってくれるさ」
「ニコ、兄?」
「ん?あー…
わり、気にしないでくれ。オレがあン人をそう呼んでるってだけだ。いやさ、本人が嫌がっからニコの前では言わないようにしてんだけどな」
バンパイアという不死者のことは知っていた。それが、不死者という括りの中でもその最上位を行く程に危険な存在である事も、それを単独で殺せる程にあのニコは、桁違いに強いことも。
だがイドは、『兄』という呼び方だけは知らなかった。
「…何?兄って言葉の意味、だ?
あー…そりゃなんだ、頼れる男っていうか。
色々教えてくれたりするような奴とかかな」
「そうか。なら、俺にはあんたが兄だな。
俺もゴイ兄と呼んだ方がいいか?」
「だああァ、やめろ!背中がむず痒くなる!
これまで通りゴイって呼び捨てにしろ!」
「分かった。そのままにしよう」
そのような、和気藹々とした雰囲気に呼応するように、二人が乗る馬がそれぞれ楽しそうに尾をたなびかせ、速度を上げた。
二人はただ、振り落とされないように手綱を掴む。
…
……
そんな風に、話をしている内にある廃村に辿り着く。廃村であるとは一言も言われはしなかったし、どうあれば滅びたと判断できるのか、ということもわからなかったが、ただ一目でそれは滅びた村ということはわかる。それ程に、風化していた。
馬から降りて、手頃な場所に馬を停める。
其処に荷を置いて簡易的な拠点にした。
持ってきたものは非常に少ないが、もしもの場所を作っておく事自体が大事なのだと、ゴイから習っていた。
「……」
イドが駿馬に、荷物を頼む、と意を込めてそっと首を撫でる。少し痛そうにしていたが、それでも嬉しそうにいなないた。
「この村か、そこん林らへんにいるらしい。ったく、漠然としてるよなァ。つーことで、二手に別れて探すぞ。行けるよな?」
「…俺は戦闘の経験が無いが大丈夫だろうか」
「ま、死んだらその時さ。墓前で悲しんでやるよ」
「分かった。死なないように任務を行ってみる」
「……ほんと、話早ェな。オレはもうちょいお前が駄々こねるのを想定してたんだぜ。ま、納得してくれたならイイか」
「ま、コツがあるとするならなンも考えない事さ。
お前さんの身体は今、お前が考えてる何倍も強いからな。見えたままに動いて、こうすりゃいいと思った時に切れ。
魔物くらいならそれでなんとでもなる」
「そうか。………なら」
なら、不死者と遭遇すればどうすれば良い?そう、質問しようとした時にはもう、ゴイの姿は消えていた。あれほど目立つ鎧は見えず、あれほど重厚な鎧を着ているのに音はまるでしなかった。
(…行くか)
ぞく。
止まれ。
身体が警鐘を発した。
その衝動に反射的に背後を見る。
だが当然そこには馬が居るのみ。
駿馬が、疑問を覚えたように首を傾けた。
(……)
気のせいとは思えない違和感。
だが実際に、何もいない。
ならば危険は無しとして前に進むしかない。
彼はそのまま、二又に刃が別れた短剣を手に征む。
…
……
魔物が居る。
それは、豹がそのまま魔に堕ちたようなものが1体。そして猪が魔に堕ちたものが更にもう2体。例に漏れず、ただの野生動物の数倍程図体が大きい。
魔物とは。大まかに分けて二種類ある。
原種生物である動物が不死者由来か、この世に蔓延する瘴気の影響を受けて魔に堕した物。
もう一つは、『世の淵』から産まれてきたのだという、どの生物とも異なる人喰いの生き物。
後者の方が凶暴で、そして強い。
故にそれが居ない事はまだ幸いだった。
ぐっ、と。
魔物を前に掌に力が籠る。
無意識か有意識か、緊張が身体を包んだ。
魔物は当然に、皆此方に気付いている。
皆が皆、臓物を啜ろうと舌なめずりをしている。
それらを感じてから、身体から緊張を意識的に解く。ゴイが言っていたことを実践する。ただ、見えたままに動いて、こうすれば死ぬだろうということを行えばいいのだと。
猪が一匹、飛び込んで来る。
その直線の動きをとん、と横に避けて、こめかみに短剣を思い切り差し込んだ。骨で止まったが、それでも貫く。それはイドが持たされた異常な膂力があって初めてできる芸当。
避け、攻撃した隙を狙い豹が跳ぶ。
退かず、寧ろ前に出て開かれた口の中に腕を突っ込む。そのまま噛みちぎられる前に、内側から喉を握りつぶした。
残りの一匹がその光景に足を止めてる間に、イドは走って近付いて、今度はその首を、骨の周りをなぞるように切り裂いた。
あっという間に、魔物の死体が三つ。
イドは自分の行った事に驚く。
自分が恐ろしい何かになった事はわかったつもりだった。だが、ここまでとは。教えてもらった知識、本から得た知識では、魔物は普通人の敵わない生き物であるというのが普通だったのだから。
だが、そんな驚きすら捨て置く。
今の任務の為には、不必要だと思った。
自分は、それが出来る。
少年にはただ、その時はそれで良かった。
そのまま、前に進む。
魔物はいくつもいくつも屯しており、その度に短剣を動かし、イドはその身体を魔物の血だらけになっていく。彼が歩いた先には魔物の死体が散乱している。
そうして前に進んでも、不死者はいない。
目当てのライカンスロープは何処にも居なかった。
(……?)
気配をすら、感じない。
違和感を思いながら先に進もうとした時。
ぞくり。
「!」
まただ。
また、その警鐘。
これ以上前に進むな。
これ以上先に行くなという警鐘を身体が発す。
何度も、何度もあった。
その度に、だが仕方がないと前に進んだ。
今回も、そのように無視をしようとして…
…違うのではないか。と、そう思った。
(…………まさか)
短剣を、腰に挿して仕舞う。
そしてその脚で、全速力で走る。
その、今まで歩いてきた道を戻って。
…
……
(……やられた)
辿り着いた時には、手遅れだった。
荷を荒らされ、その中にある食料も全て無くなり、予備物質も火も薪も、そこにて日を明かすための全てが奪われている。
「………ッ!」
何より、彼の愛撫に喜んだ駿馬。
その全身は食い荒らされて、四肢がばらばらに散らされてすらいた。元々が馬であったのかすら、わからない程に。
(まんまと、やられた。不死者は初めからこれが目的だったのか。ゴイを責めるか?否、所在地が分からないのなら、任務である以上は探しに行かないわけにはいかない。『それを』理解した上でここを荒らしにきたのだ、件の狼男は)
ぞくり。
警鐘は止まない。むしろ、増幅している。
(…なら、不死者は。ライカンスロープは次は何を考える?おびきよせ、その間に物資を奪い取る悪辣を持つ不死は…)
ぞく、ぞく、ぞくり。警鐘。
カウントのように、どんどんと背筋が粟立つ。
(………此処に、迂闊にも一人で戻ってくる。
そんな愚か者も、予想している、のでは)
ざん。
木の上から、まるでリスのように身を軽く降りてきた存在が、彼らのターゲットであるという事は、すぐに分かった。
獣臭。そして、臓物の臭い。
さっきまで食い荒らしていた、馬の血の臭い。
警鐘は、最早鳴らなかった。
ライカンスロープ。
その本質は、人狼としての悪辣さと器用さであり、不死そのものの存在としては強い、という訳では無い。巨大な訳では無く、爪や牙が恐ろしくも、魔物の域を出ては居ない。空を飛ばず、繁殖も人を喰い殺した時のみ。
総じて不死者としては『そこまで強くはない』。
性質上は早く始末をすべきだが、その程度だと。
そう、イドは学んでいた。
だが、そんなライカンスロープが目の前に居る。
ただそれだけでイドは、だらだらと脂汗を流れた。身体中が泣き叫ぶように汗を流し始めて、息が荒くなり、身体が固まった。狼のその目の奥にある智慧を見るのみで、謂れの無い発狂に襲われそうになった。
生き物としての、格が異なる。
そんな存在であることを、まじまじと感じる。
ただそれに腰の短剣を引き抜いた。
その剣が今や、異常に頼り無く思えた。
(…………これは…)
イド少年には、恐怖は無い。
そもそものその情緒が育つような期間が無かった上に、彼自身何処かしらが壊れていたのだろう。恐怖や怯え、絶望感は無い。
だが、ただ断崖に立っているような気分になった。
四方どこに足を踏み出しても奈落に落ちるような、そんなような錯覚。断崖とは即ち現況であり、足とは選択肢であり、奈落とは死だ。
なんだ、これは。
動けない。
動いた途端に、死ぬ。
止まっていても死ぬ。
どうあっても、死ぬ。
ご、ば。
「ぎゃ、がぁっ」
破砕と、裂傷が同時に行われた音。それに伴う間抜けな悲鳴。それが混じって飛んで、イドは、気付けば、視界が真っ赤に染まっていた。爪による一撃であったというのは、その後に分かったことだった。
止めを刺されなかったのは、ただいたぶる為。
仰向けに倒れて動けないイドの胸に足を乗せる。
そしてだんだん、ゆっくりゆっくり。
ただ、苦痛に歪む姿を見るだけのみ。
それだけの理由で、狼はその足をじっくりと踏みしだく。
「……ッ…ゴ…けぼッ…!」
こき、ぺき、べき。
鳴る音は、どんどんと重厚な音になる。
次々に砕けてそれが肉にたどり着いていく。
決死の思いで、ライカンスロープの顔を覗く。そのような極限状態でら何故覗いたかは、彼自身わからないことだが。
その目は、イドを見据えてなかった。
『いつ、死ぬだろう』
そう言いたげな、悪辣な目。
イドを見てはいない。
ただ、邪悪な好奇心が赴くだけの行動。
目の前にある生命をまるで見ては居ない。
(……死ぬ、死ぬか。俺は、このまま…)
殺される事、ただあの馬のように殺される事。
それらが、嫌というわけではなかった。
俺だって、そうして死にたく無い魔物を殺した。
第一、こいつを殺しにきたのだからと。
そう、本当に思っていた。
だが、一つ。
(……こいつは…)
こいつは、『俺を見ていない』。
己を介し、己以外を考える。
『イド』をまるで見据えぬ、それが腹立たしかった。
個人を見つめず、ただ虫のように踏み潰す。
それだけが、気に食わなかった。
どくん。
腹立だしい。
忿怒。
ああ、そうだ。
少年はこの時に初めて学び、思ったのだ。
感情を。想いを。脈動を。
『怒り』を。
どぐり、身体の底から何かが湧き上がる。
イドは足を踏み出した。
断崖にただ一つのみ道が溢れた。
それは奈落を打ち崩す光。
魂が感光するような、空を穢したように、蒼い。
「……ゥ、おお゛おおおおッ!!」
吠えた。ただ衝動のままに。
短剣を、脚に突き立てる。衝動のままに。
その短剣からは、僅かに、そして静かに。
蒼い炎が溢れて、不死者の命を焼いていた。
『…!?』
その痛みに顔を顰め、その自らを死に追いやる炎に恐怖したのか。ライカンスロープは身を引いて、警戒の目で彼を見た。
イドは立ち上がる。
立っているだけでもやっとの姿。だがそれでも、警戒されている以上、それが虚勢だと解られてはいけない。
短剣を逆手に構え、見つめ返す。
永遠に、そうして見つめあっていたような気がする。ただ本当は、きっと一瞬だったのだろう。
「…オーケィ、イド。よく耐えたな。
後は寝てな。オレが全部やっといてやる」
その声が聞こえて、ただイドは崩れ落ちる。
倒れ込み、まばたき一つすらできない程に疲労困憊の身体。それは重症の怪我のせいか、それとも、先ほどの炎のせいか。
ただ、声の持ち主の姿が見える。
背から引き抜き、手に持つは巨大な戦鎚。
メイスよりも更に数段階大きいそれは、人どころか魔物をすら相手取るにすら過剰な、こけおどしにすら見えた。だがそのこびり付いた血の跡だけが、実用性を帯びたものだという事を証明する。
その、戦鎚からごうと蒼炎が滲み出る。
イドの短剣から溢れたそれと同じ。
それでいて、その総量はまるで異なる。
炎は生命を持つように動き、形どり。
戦鎚を、蒼い刃を持つ破城槍へ姿に変えた。
「……よくもオレの弟をやってくれたなァ」
その言葉を最後に、イドは意識を失った。
…
……
次に目覚めた時。
川の側で甲斐甲斐しくイドの鎧を洗うゴイの姿がまず目に映った。
はっと、下着のみの自分の身体を見る。鎧を脱がされた姿は見窄らしいものだった。だがしかし、そうではなく。裂傷も無ければ、粉砕された筈の骨すらも治っている。
寝ている間に治療されたのか。
否。これは、恐らく……
「ン、おお!起きた!起きたかイド!
良かった良かった!
『あの程度』の傷なら、1日で治るんだな!」
目を覚ましたことに気づいたゴイがどすどすと猛スピードでこっちに寄ってくる。そうしてイドの胸元をバンバンと叩いてから、安心したように胸を撫で下ろして、そしてずんと頭を下げた。
全くもって、慌ただしい感情の動きだった。
「…いくら恨んでくれてもいいぜ。あんな大口叩いておいて、このザマだ。散々に遅れてそっちに行くわ、結局いいとこ取りしかできねェわ、何よりお前を死にそうになるまで追い詰めちまった…」
「やめてくれ。恨みなんて無い。確かに俺はあの時苛ついたけど、あれは…あの不死者へのものだ。助けてくれたあんたへじゃない」
「…それに、あの激情とは俺に必要なものだった。それが分かっているし、恨むなんて意味がない。合理的でも無い」
「カァッ、そう言って貰えンのは嬉しいけどな…お前、どうにかなんないかその喋り方!なんつーか、機械みたいじゃねえか!」
「機械?機械は喋るのか?
俺が知る機械は発声能力が無いものだけだが」
「だー、比喩だってんだよ!わかったわかった!そう言ってくれてサンキューな!ただ、ケジメとして言っておくぜイド!オレはお前さんに何発でも殴られる覚悟はあるし、実際してもいい!」
「そうか。そんなことより」
「そんなことッ…
…まあ、いいか。なんか聞きたいか?」
ずんと、落ち込むゴイ。
だがそんなことよりも。
もっともっと、イドには気になることがあった。
「……俺も使えた。
そして、あんたも使っていた。
あの、蒼い炎はなんなんだ?」
それを聞いた。
すると、ゴイは顔をバッと挙げて急ににたにたと嬉しそうに笑い始めた。そしてまた激しくイドの背中を叩いて、彼を咳き込ませた。
「オウ、応!教えてやるとも、教えるさ!!」
「…ゴ、ゴイ…うるさ…」
「ナナぁ、アイツ馬鹿だから理屈説明してもそのまんま聞き流しちまうし、ニコ兄ぃは殺せるならなんでも良いって聞こうとすらしねェし!だから、この炎がなんなのかって聞いてくれンの、イドが初めてなんよ!オレぁ説明したくてしたくてウズウズしてんのよ!聞いてくれな!!」
「…ゴイ…静かに……」
……その説明は、ただ日が明けるまで続いた。
…
……
ライカンスロープ討伐任務
請負人: 51番 110番 以上二名。
任務結果:
達成。損害無し。
51番が首を持って帰投。
後に胴体の一部分も提出。
損傷が激しく実験の素体は不可。
備考:
110番が『鎮魂』能力に目覚める。
→感情の揺れによる発生?
暴走の可能性アリ?要注意。
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