9月15日

 朝早くに島根を発つ。

 山陰は雨降り、伯耆大山ほうきだいせんは霧隠れ。山陽の岡山へ抜ければすっきりと晴れた。

 昼過ぎに東京へ着いた。

 そういえば電車の中にはディスプレイがあるものだったと、浦島太郎というかなんというか、不思議な気分で電車に揺られていた。


 病院の最寄り駅で、父と待ち合わせる。

 処置の都合で面会できる時間が少しずれて、少しお茶を飲むことになった。

 二年ぶりに会う父の皺は思いのほか深くなっていた。母の状態を改めて聞く。なんとも長患いになってしまった。


 いざ対面した母の姿は、話には聞いていても少なからず衝撃があった。様々な管が繋がれ、喋ることも自力で起きることもできず、両手を少し動かせるくらい。それでも、良くなったのだという。

 私が話せばちゃんと聞いて、目で反応が返ってくる。手を握れば握り返してくれた。しっかりと意識があって安堵したが、それ故に満足に動かない体はもどかしいだろうと思う。

 なんとか、涙は流さずに済んだ。


 私はなんともぼんやりしてしまったが、夫は色々と提案もしてくれ、本当にありがたい。

 久方ぶりに食べた牛カツが、美味しかった。

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