4月17日 みたらしだんご、米粉ドーナツ

 夜遅くには雷鳴が轟き、笑ってしまうくらいに激しい雨音がしていたのに、そんなものは無かったかのようないつものぼんやりとした晴れ。

 昨日まで私が名古屋にいたのも、なんだか嘘のように思える。


 昨夜は「特急やくも」の揺れにやられた頭がどうにか落ち着いてから、名古屋にて大阪在住の方にいただいた『むか新』の「元祖大阪みたらしだんご」を夫と食べた。賞味期限が二日ほどなのでぎりぎりなのだった。

 これは一般的なみたらし団子とは違い、団子の中にタレが入っている珍しいもの。「中のタレがこぼれないように一口でお召し上がりください」と、注意書きもある。

 白く透けた団子はつやつやとして、弾力がありつつもぷちっと歯切れが良い。噛んだその瞬間、口内へとろりと蜜が溢れだす。通常塗られるタレよりも粘度は低めなので食べやすく、しかししっかりと甘辛い、あの味。それがもっちりとした団子と、その上に付けられた香ばしい焼印と合わさって、ちゃんとみたらし団子の美味しさを味わえるのだ。

 これに合わせたのは、松江の日本茶店『三幸園』の煎茶である。味の濃い蜜に、すっきりとした煎茶がとてもよく合う。

 実のところ、日本茶は松江の名物の一つである。松江藩七代藩主の“不昧公ふまいこう”こと松平まつだいら治郷はるさとが茶人であったことから茶の湯の文化が広まり、今も日本茶はかなり身近にあるのだった。また、寒暖差が大きく山がちな島根は質の良い茶葉が育ちやすいらしく、三幸園の他にも日本茶店がいくつかある。それぞれに美味しく、そうした茶葉に手が届きやすいのは、島根で気に入っているところではある。

 みたらしの甘さが疲れた体にちょうど良く、ありがたい一服だった。

 

 明けて本日。二日の間に溜まった家事をする日だった。

 片道五時間の移動でやられた腰の痛みに呻きながら、どうにかこなしていく。同時刻に掃除を始めた人のTwitterスペースや、70年代東欧プログレをBGMにして。

 我が夫は優しいのだが、「使ったものを元の位置に戻す」ということがどうしてもできないタイプの人で、家の中はまぁ散らかっていたし、旅に出る前に放置していた諸々もある。それをどうにか片付けていると、いつものミールキットが届いた。届いたのだが。

 段ボール箱の底が濡れていた。嫌な予感がしつつも開封していくと、どうやら材料の一つである「豚肉のブイヨン煮込み」のパッケージ不良で、煮汁が漏れ出てしまっているようだった。大変に億劫だったが電話で問い合わせをし、返金処理となったものの、自分の手と部屋の中がもんやりと煮込んだ肉の匂いになった。それでもう、すっかり気分が萎えてしまった。


 無性に珈琲が飲みたくなった。

 電気ケトルの“わく子さん”で湯を沸かし、小川珈琲のドリップバッグで手早く淹れる。

 お茶菓子はミスタードーナツ。何故か急にミスド欲が高まったらしい夫が買ってきていた「米粉ドーナツ 濃いほうじ茶ホイップ」を食べることにする。これは祇園辻利とのコラボ商品である。

 宇治ほうじ茶と米粉で作ったドーナツは、もちもちとした食感が楽しく、甘さは控えめ。穴には栗餡を忍ばせた上にほうじ茶ホイップを絞り、底はホワイトチョコレートで塞いである。ホイップは商品名の通りに濃厚なほうじ茶の風味を感じられ、しっかりと香ばしい。それを引き立てるようにほっくりとした栗餡がやってきて、振りかけられた黒五黒糖シュガーの穏やかな甘味が全体をまとめる。

 個人的には栗餡が甘過ぎる気はしたが、構成に工夫を感じるドーナツだった。通常のミスド商品ほど油っこさや甘さは感じにくく、大変食べやすい。ほっと一息、にはちょうど良いだろう。


 今日はまた夫の夕飯がいらない日なので、自分は雑にパスタなどを食べようと思う。その後は映画「キングオブエジプト」を観ることになっている。気楽に観れそうな作品なので、今夜はお酒も飲んでしまおう。


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