4月11日 ダースプレミアム ピスタチオ&ベリー

 爪の手入れをした。

 といっても、爪を切り、甘皮を処理し、そこへオイルを塗りこんだだけである。


 ネイルアートというものを、私はほとんどやらない。コントラバスを少し弾いているのもあって、まず爪を伸ばす習慣が無い。マニキュアを塗れば気分は上がるが、爪の上を塞がれている感覚は未だに慣れないし、絶望的に不器用なので自分で塗るのも下手っぴである。結婚式に出席するだとか、いわゆる「ちょっとしたパーティー」だとか、そういうときに何度かネイルサロンへ行ってみたりはした。しかしここ数年は、それもしていない。残念ながら私の爪では費用対効果が良くないのがわかったからである。

 どうも私は、爪が伸びるのが人よりも早いらしい。

 ジェルネイルを塗って、翌日はちゃんと綺麗に見える。だが二日後には、もう素爪が皮膚の境目からちょいとのぞいてしまうのだ。流石にまだ気になるほどではないものの、一週間も経てば、素爪の範囲は3ミリほどになってしまう。ぷっくりつやつやとしたジェルネイルの下から伸びてくる素爪、その差は誰の目にも明らかで見た目が悪い。多くの人は、こうなるまでに二三週間はかかるという。それを知って、私にネイルアートは向いていないものとして諦めてしまったのだった。


 甘皮の処理を始めたのは、恥ずかしながらここ数年のことである。

 きっかけは久しぶりに、年下の友人男性に会ったときのことだった。酒を飲みながら楽しく話していて、どういう流れだったか、身だしなみの話になった。彼は清潔感のある好青年で、眼鏡にもちゃんとこだわりがあって、「見た目に気を遣っていて偉いよね」とか、そんなことを私が言ったのだと思う。すると彼は「いや全然ですよ」と謙遜した後、「ああでも」とこう続けたのである。


「甘皮は処理するようにしてますね。エチケットかなと思って」


 わーえらーい!とニコニコしながら、私は自分の手をそっと隠したのを覚えている。甘皮処理。エチケット。そんなことを考えずにこんな歳になってしまった女である。彼に悪気は無いことはわかっているが、そのときの私は完全に打ちのめされて、改心したのだった。甘皮を処理する女になろうと。エチケットなのだから。


 そんなわけで、不器用ながらちまちまと爪の手入れをする日が定期的にある。ニッパー型の爪切りは便利だし爪の負担が少なくて良い。これを買ったのは「2k540」という秋葉原と御徒町の間にある高架下の商業施設だった。様々な職人の手仕事を身近に感じられる良いスポットで気に入っていた。また行きたいものである。


 今日はまた風がびゅうびゅう吹いて、窓をガタガタ鳴らす日だったので、あまり体調は良くない。

 こういうとき、一口で美味しいものがありがたい。

 今ちょうど良いのは「ダースプレミアム ピスタチオ&ベリー 」。パッケージもきらびやかで、ちょっと豪華な十二粒のチョコレート菓子である。

 私がピスタチオ好きなことには何度か言及しているが、昨今のブームであらゆる菓子がピスタチオ味を出しているものの、私が納得できる商品は正直少ない。しかし新しく見つけるとつい手を伸ばしてしまう。その中に美味しいものが見つかるかもしれない。その希望をまだ捨てていない。

 そして見つけたのが、このダースプレミアムである。

 昨年末、ピスタチオ味のダースプレミアムは「白いダースプレミアム<ピスタチオ>」と「ダースプレミアム<ピスタチオ&ベリー>」の二種類が発売された。

 白いダースの方は、ホワイトチョコレートにピスタチオチョコレートの入ったもの。美味しいのだがホワイトチョコレートの味でピスタチオ感はかなり薄まってしまい、個人的には残念なものだった。

 一方のピスタチオ&ベリーについては、口溶けなめらかなミルクチョコレートの中に、カリッと食感の楽しいピスタチオ風味のビスケットと香ばしいピスタチオペースト、それにドライクランベリーが詰まっている。こちらもピスタチオ感は弱めである。しかし、ひと粒で感じられる味のバランスがとても良いのだ。ピスタチオ好きの方やケーキ好きの方ならわかっていただけるのではないかと思うのだが、クランベリージュレを包んだピスタチオムースにチョコレートグラサージュのかかったケーキ、あれに非常に近い味がする。指先ほどの小ささであの味わいを楽しめるという、とても満足度の高いチョコレート菓子なのである。

 今日でそれを食べきってしまったので、また買いに行かねばならない。そろそろ終売の気配がする。できればずっと販売し続けてほしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る