4/24(月)「セロリ」
さて同棲10年目。
記念日だから早く帰れとスタンプで催促された。彫りの深い美貌の無口は、今でも言葉が足りない。
家の鍵を開けるとむわりと爽やかな匂いが漂う
あいつやりやがった!
テーブルには一面のセロリ。
いや、二人の記念の花だけど!
キラリとセロリの花の指輪が光る。
花言葉は真実の愛
【おまけ】
2022年に花言葉物語の企画に参加した時に、セロリで一本作ったので、その二人のアフターストーリーとしてつくってみました。
以下その内容です。
『セロリは投げられた。』
いつも一人でいる無口な彼は、観賞用置物。とクラスメイトから言われている。
長身で体が引き締まっており、彫りが深いギリシアの彫刻風の美貌を持つ彼は、兎に角目立つ。
外を歩けばモデルにスカウトされ、学園祭で校内を歩けば生徒募集用の写真撮影を頼まれる。
一年生の時に同じクラスになった時には随分とざわついたものだ。
二年に上がる頃には完全に観賞用置物としての地位を確率していたが。
井上姓であることが喜ばれるのか悔やまれるのかはわからないが、阿形(あぎょう)穂賢(ほさか)なる奴とは日直がいつもペアになる。三年連続とは思わなかったけれど。
「あいてっ」
頭にぶつけられ、机に転がってきたものを見る。
副担任の顔より良く見た細長い野菜。
とまと?きゅうり?全然違う。
そんな可愛い野菜じゃない。
「またセロリ……」
阿形穂賢は観賞用置物として、基本他者には迷惑は掛けないはずなのに、なぜかいつもセロリを投げつけてくる。
いや、本当に思う。
何でセロリなんだよ。
他の人には投げつけないのに、セロリをこの頭に何度も投擲してくるのだ。解せぬ。
日直当番の時には良く投げつけられる。
話さぬ貴様の代わりに先生の雑用小言を聞いてやっているのに。解せぬ。
最初はざわついていた周りも今では慣れて、今日のセロリはまた一段と立派だね!なんて声をかけてくる人もいるけど。
投げた本人はじっと、こちらの顔を無機質に見てくるのだ。
いや、理由を教えてくれませんかね。
なんでこんなにセロリを投げつけてくるんですかね。
まぁ、家に帰ってきちんと洗って食べますけどね。このあとスタッフが美味しく食べました、的なね。
ちなみに、セロリは嫌いじゃないが、好きでもない野菜だ。解せぬ。
そんな不規則にセロリを投げつけられる日々も今日で終わる。
「すごいな……一切阿形が何を考えてセロリを投げつけてきたか卒業までわからなかなった…」
わかるのはセロリ料理のレパートリーが増えたことぐらいか。
教室に鞄を取りに戻ると机の上に可愛くラッピングされた花束状のものだ。
ふ…卒業おめでとうの花束かと普通は期待するだろう?
中を覗き込むと期待を裏切らない……そう!セロリだ!!!!
おかしいな。名前もないのに送り主が特定できる。
「あれ、このセロリと……花…もしかしてセロリの花かな?」
セロリは部活の顧問よりも見慣れた野菜になってしまったが、花ははじめてのパターンだ。
ぺぺぺっとスマホではじめてセロリを検索する。
「へぇ、やっぱりセロリの花だ。ほぉ、旬は冬から春か」
すまんな、セロリ。お前のことは好きでも嫌いでもなかったから今まで興味がなかったぜ。
「へぇ、野菜にも花言葉とかあるんだ。セロリは……」
……ん?
「…………………は?」
セロリの花束を大切に鞄にねじ込み、教室を慌てて飛び出す。
まだ、確か写真撮影に捕まっていたはず。
観賞用としての人気は高かったから後輩とかにも捕まっていたはず!!
「あの馬鹿!!そんな大事なことならもっと早く伝えろ!!!!!」
セロリの花言葉:真実の愛、会える幸せ
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