第70話 彼女の中でここのラーメンは2位らしい
「学年末考査で学年50位以内に入らないとバイト禁止って言われたの。これ、ピンチだよね?」
「そうなのか……?」
深刻そうな話の雰囲気を醸し出していたのでてっきりお父さんとの話かと思ったが……いや、関係しているのか。
「私、好きな漫画とかアクセサリーとか、服とか買いたいものいっぱいあるのにバイトなくなったら買えなくなるの。だから次のテスト、すっごい頑張らないとヤバいんだよ」
「で、俺に教えてほしいと?」
そう尋ねると彼女は、小さくコクコクと頷いた。
「わかった。香奈達と勉強会する予定だけどそれに優愛も参加するってことでいいか?」
「うん、香奈に私も参加するって伝えてほしいな。碧は、今回も露崎ちゃんに負けないよう1位目指すんでしょ?」
「いや、別に目指さないけど」
この前は父さんとの約束があったからいつもより頑張っただけで今回のテストはそこまで頑張ろうとはしていない。
「えっ、なんでよ。碧、賢いのに勿体ない」
「そりゃいい点数は取りたいけど1位へのこだわりはない」
「ふぅ~ん」
優愛と話していると瑞季が着替え終えたようで服を元の位置に戻し、3人でショッピングモールに行って遊んだ。
──────1週間後の休日。
「2名ですね、そちらのお席へどうぞ」
(あの2人は、この前、男子より先にあのラーメンを食べきった子達じゃないか)
この前碧、瑞季、優愛が来たラーメン屋の店主は、来店してきた瑞季と優愛に驚いていた。
(また来てくれたということはここのラーメンの美味しさに気付いてくれたということ、さて、今回はどの量で頼むのだろうか)
「まさか、瑞季がここのラーメンをそんなに気に入ってくれるとは思わなかったよ。ここ、私のランキングだと2位ぐらいなんだけど美味しいよね」
優愛がそう言ってメニュー表を瑞季と見ている中、店主は耳を傾けて聞いていた。
(1位はどこだ!? すっごい気になるんだが!?)
「瑞季は、この前と同じの頼む?」
「そうですね……優愛さんの2番目にオススメのラーメンはありますか?」
「そうだねぇ……チャーシューかな」
(まさかのトッピング!! ラーメンじゃないのか!?)
「では、あっさりラーメンでトッピングにチャーシューを。優愛さんはどうされます?」
瑞季は先に注文するものを決めて、後は優愛だけだ。
「私も露崎ちゃんと同じのにしようかな。量は大盛りで」
「普通でも多いのに大盛りなんですね。凄いです、優愛さん」
「いやいや、ラーメンは飲み物だし、量が多くても少なくても同じでしょ」
(あの子はよく店に来てくれるんだけど、毎回女子が食べれる量じゃない量を頼んでくるんだよな)
「すいませーん! あっさりラーメンチャーシュー付きを2つ。1つは大盛りで!」
「はいよー」
頼み終わった瑞季と優愛は、ラーメンが来るまで話して待つことにした。
「私、ラーメン屋巡りが趣味なんだけどここ好きなんだよね。店主ノリ良くていい人だし、何種類かラーメンあるけどどれも美味しくて」
「かなり種類が多そうですが、全種類食べたのですか?」
「うん、食べたよ。私、ここの常連客だし」
「お待たせしました、あっさりラーメン2つです」
テーブルへラーメンを置くと優愛は、店主にありがとうございますと笑顔で言う。
15分後、2人はラーメンを完食した。美味しそうに食べる姿を見て店主は泣きそうになっていた。
「田野さん、あっさりラーメン、この前食べたのも美味しかったけど何か前より美味しくなってません?」
「おぉ、気付いたか、さすが常連さん。そうだよ、ほんの少し味を変えたんだ」
「ふふふ、凄いでしょ! 毎週、ここのラーメン屋で食べてますから味が少し変われば気付きますよ」
優愛は店主である田野という人とはいつの間にか仲良くなっていた。
「そちらの方は常連さんの友達か?」
「はい、この子もここのラーメン、気に入っちゃったみたいで。また常連客が増えちゃうかもですよ」
「それは嬉しいな」
「とても美味しかったです、ごちそうさまでした」
瑞季は、軽く頭を下げてお会計を済ませる。
「ところで常連さん、ここより美味しいラーメンはどこなのか教えてくれないか?」
「えっ……もしかして聞こえてました?」
優愛はまさか聞かれているとは思っておらずヤバいと思い始める。優愛の問いに店主は頷いた。
「え、えーと、ここが1番に決まってるじゃないですか! 私のラーメンランキングではここが1位ですって」
「それは嬉しいことを聞いた。ここが2位というのは聞き間違いってことだね?」
「そうですよ~」
あははと優愛は苦笑いする。優愛も会計を済ませすぐにラーメン屋を出た。
「優愛さんは、店主さんと仲がよろしいのですね」
「まぁ、よく行くからいつの間にか喋れる間柄になったんだよね。さてさて、次はスイーツ食べに行こっか」
「今からですか? わたしはもう無理です……」
自分より量の多いものを食べていたのにまだ食べれるのかと瑞季は驚いた。
「う~ん、じゃあ、お茶しに行く?」
「それなら……甘い飲み物が飲みたいです」
「なら、美味しい苺ジュース飲めるところあるからそこに行こっか」
「はい、是非行きましょう」
こうして瑞季と優愛は、オシャレなカフェへと向かうのだった。
『#71 キスする前に名前を呼ぶとキスに対する意欲が高まるらしい』
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