第62話 疲れた時は癒しが必要
「ねぇ、放課後残って勉強会しない?」
昼休み、そう提案したのは香奈だった。いつもこういうことを提案するのは香奈なのでそろそろ言うだろうなとは予想していた。
「いいですね。碧くんは、どうされますか?」
父さんに1位を取ると宣言したから友達とは勉強せずに家にこもって勉強しようかとしたが、瑞季達と勉強をしたかったのでそれはやめた。
「俺も勉強会参加しようかな」
「お~、碧が珍しく乗る気だねぇ~。1位目指しちゃう感じ?」
「まぁ、そうだな。少しは、瑞季に負けないぐらい頑張ろうかなと」
決して父さんとの約束をしたから1位を目指すとは顔にでないようにした。
「みっちゃん、大変だよ。1位の座が碧に取られちゃう!」
「私は別に取られてもいいですよ。いつも通りの点を取れれば個人的にそれでいいですし」
今までならお母さんに見てもらいたいために頑張ってきたが、瑞季は無茶せずやっていこうという考えに変わった。
「もし、碧くんが1位になったその時は、私がまた手料理を作ってあげます」
「それは頑張らないとな」
***
お昼を食べた後、瑞季と香奈は、中庭に行ったが、俺と晃太は教室に残っていた。
「なぁ、碧さんや」
「なんだ?」
「何か親に言われたのか?」
「晃太、俺のこと監視してる? 当たってて怖いわ」
いつも見透かされている気がするが晃太の場合、もうヤバい。監視カメラでもつけられてるのだろうか。
「父さんに今度の期末考査学年1位取らなかった場合瑞季と別れろと言われた」
「うわぁ~厳しっ。付き合ってること言ったのか?」
「まぁ、いずれバレそうだし。晃太の親は香奈との付き合いは認められてるのか?」
「いーや、香奈の両親が俺のことなんか気に入らないみたいでさ……何が気に入らないかハッキリ言ってほしいのに言わないし」
晃太もいろいろあるんだなと思い、彼の愚痴を少し聞いて上げることにした。
「碧、正直に言ってみ。俺の悪いところはどこだと思う?」
「俺をからかってくるところ」
「それは香奈の親が気に入らないところじゃないな……やっぱ賢さとかそういうのを見られてるのかな」
「さぁ……チャラそうに見られてるんじゃないか?」
香奈の親が晃太のことを気に入らないと思ったということは晃太は、香奈の親に一度挨拶をしに行っているということだ。
そこで何かしら気に入らない行動を晃太がした可能性はあるが、やはり香奈の両親に直接どこが気に入らないか聞かないとわからないものだ。
「話し戻すけど、碧は、瑞季さんにお父さんとのその話はしたのか?」
「してない……。テスト後にでも言うよ」
今言ってしまうと瑞季が俺を1位になるようにと手を抜く可能性がある。そんなことがないためにも彼女には言わない。
「そっか、まっ、頑張れよ。テスト終わったらどっか遊びに行こうな」
「あぁ……」
***
テスト1日前。瑞季が、家に来て一緒に勉強しないかと誘われたので彼女の家で勉強をしていた。休みの日だったため家には瑞季の父親である明人さんもいた。
彼女の部屋でやっているとコンコンとノックする音がしたので開けると明人さんが何かを持ってきていた。
「いや~偉いね。2人とも真剣に勉強して……はい、どうぞ」
テーブルに飲み物とちょっとしたお菓子が置かれた。
「ありがとうございます」
じゃあ、頑張ってと言って明人さんは、部屋を出ていく。
疲れたので俺も瑞季も少し休憩することにした。かなりの時間、勉強したため甘いお菓子がいつもより美味しく感じる。
「このクッキー美味しいですね」
瑞季も俺と同じのを食べていたようでそうだなと返す。少しの休憩の後は、勉強を再開した。
1時間後、集中が切れて、ふと彼女のことを見ると目があった。
「疲れましたね。膝枕させてあげましょうか?」
「いいのか?」
「えぇ、どうぞ」
彼女は自分の膝をトントンと叩きどうぞとニコニコした表情をしていた。
仰向けに頭を彼女の膝におくと見下ろしていた彼女と目があった。この向き、俺にはきついかもしれん。横向きに寝転べば良かったなと少し思った。
「疲れた時は癒しが必要ですよ。碧くん、今回頑張ってるようですし、テスト後は、たくさん甘やかしてあげますね」
今でも十分甘やかされているのにさらに甘やかされるのか?
頭を撫でられ、自然と目が閉じてしまった。このまま寝てしまうのではないかと思うぐらい心地が良かった。
「ずっとやってもらってるから交代するよ」
起き上がり変わろうとすると瑞季は、何か言いたげな顔をしていた。
「わ、私も碧くんになでなでされたいです」
(何この、可愛さは……)
言い方とお願いしてくる仕草に俺は、ドキッとした。
「わ、わかった……」
「お願いします」
ふふっと笑いながら俺の膝に寝転んで来る彼女は、まだ何もしていないのに嬉しそうな顔をする。
「碧くんに撫でられるの好きです」
「前にも聞いたような……」
「ふふっ、何度でも言いますよ」
暫く撫でていると彼女はうとうとし始めた。
「眠そうだな」
「碧くんが頭撫でてきたからですよ」
「俺のせいかよ……。寝るならベッドで寝た方がいいんじゃないか?」
「じゃあ……一緒に寝ましょう……。碧くん、前にもう一度添い寝してほしいと……言ってましたし」
瑞季は、一度寝たら中々起きないので今ここで寝られたら俺は身動きが取れなくなる。そうなる前に────って、もう寝てる。
頬をふにふにすると彼女が「ふふっ」と小さく笑った。
頬以外も触りたい気持ちがあるが、今は抑えておこう。寝込みを襲うなんてましてや下には明人さんがいる。
(ふにふにで我慢だ)
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