【詩】「私」


夜の海を漂っていた

かすかな月明かりが「私」を照らす


どれくらい漂っていたのだろう

「私」は

細胞分裂を繰り返し

少しずつ大きくなっていた


名前がまだ無い

海を漂う生物か何か

名前が欲しい……


「私」は生えた耳を澄ます

語りかける声は優しく

温もりを感じた

名前は、まだ無い

いや

はっきりと聞こえないだけ

まだ、この海を漂っているから


ザア

ザザア

海の唄はゆっくりと流れる


ゆっくりゆったりと波に揺られ

漂う


目的地など知らない

けれど、優しく「私」を呼ぶ声がする

名前は、まだ、はっきりと聞こえない

でも、確かに

「私」を呼んでいる


小さなあかりが見えた

しっかりしないまなこに映る


ゆっくりゆったりと

その灯りの方へ


波のゆりかごは「私」を運ぶ



光が強くなった

暗い夜の海から

この世界に 「私」は生まれた


泣いた


怖いから?

それとも

うれしいから?


分からなかった


ただ、泣くことしかできなかった

ただ、声を上げて泣くことしかできなかった


また、

「私」の名前を呼ぶ声がする

それは、

温かなその人は、

母なのだと感じた


「私」は生まれた


この世界に――

たった一つのこの世界に――



そして、時が動き出した



上手くできませんでした。。。


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