第20話 信玄とエヴァ
家康と会談する、数時間前の話
この世界に来て初めての朝を迎える
『この布団というものは、実に心地の良いものですね〜』
冒険者稼業が長いエヴァは、野宿やダンジョンの安全地帯での
毛布1枚での雑魚寝に慣れきっていた。。。 悲しい習性である
「天女様 お目覚めでしょうか? 真田昌幸でございます」
障子の向こうから声が掛かる
「はい おはようございます」布団に未練が残る
「お館様、武田信玄が天女様と朝食を共にしたいとの事なのですが いかがでしょう?」
「少々お待ちいただけますか えっと。。。どちらへ伺えば?」
「はい 隣の天守曲輪です ご案内いたしますので お支度が整うまで ここで待たせていただきます 新しい着物を用意しておりますので女中が着替えの手伝いに入りますが よろしいでしょうか?」
「寒いでしょうに すぐに支度しますね どうぞお入りください」
「失礼いたします」風呂敷を抱えた少女が障子を開けて入ってくる
「お願いします」エヴァが微笑み軽く会釈をする
「こんなに奇麗な人。。。初めて見た。。。」心の声が口から出てしまったようで、思わず両手で口を塞ぐ
昨夜用意してもらった寝間着を脱ぎ 無詠唱で身体に洗浄魔法を掛ける 洗浄、脱臭が瞬時に完了する
着物の着付けに入るが、昨日借りた着物と違い 何着もの布地と紐 帯等を少女が手際よく着付けてくれる
「これ、苦しいのですね? どうやって走るのでしょう?」
「走るのですか?」キョトンとした顔で聞き返してくる
「走らないのですか?」エヴァも聞き返す
「走らないですね。。。。」どうやら この世界の女性は
走ったり 戦に出たりはしないようだ
『そうか。。。魔法のない世界では、単純に身体能力に劣る女性は、戦力にならないということか』
着替えを終え 髪を整え(結っていない、断固として拒否した)
『だって重そうだし どうやって寝るの?』という理由で
「お待たせしました」昌幸の待つ廊下へと出る
「お美しい。。。」心の声が出たようである
用意してもらった履物を履く 『ははっ こりゃ 走れないわ』
城内の中庭を抜け 信玄の待つ天守曲輪へと向かう
「天女様をお連れしました」 「お通ししろ」
「おはようございます 昨夜はよく眠れましたでしょうか?」
信玄の隣に座る真田幸隆が聞いてくる
「おはようございます はい とてもよく眠れました」
「天女殿のお口にあえば良いのだが」信玄が気遣う
お膳に並べられた料理を見る 焼き魚に米を炊いたもの
漬物に味噌汁 焼き魚以外 見慣れない物ばかりだが
冒険者時代の干し肉と乾パンに比べたら 大抵のものは
ご馳走である
『実際にどれも美味しい 昨日のほうとうも美味しかったし
この醤油と味噌というものが魔法の調味料ね!!』
朝から上機嫌である
「天女殿とルイ殿は、どういったご関係であろうか?」
「付き人ですね」即答である 実際には、同じ孤児院で育った
姉弟のようなものであるが
「なるほど あの陰陽師の術は我々でも習得出来るものなのでしょうか?」
「才能と努力でしょうか。。。ただルイに人様にものを教えるような能力は無いと思いますよ」落胆する幸隆
「天女殿 その。。。 なにか不自由はされておりませぬか?」
「この着物と履物は、とても美しいのですが。。。走れません
昨日の着物の方が良かったです」
「いや 昨日の着物は、男物なのです。。。わかりました なにか動きやすい着物を誂えますので 今日のところは、それで我慢して頂けますでしょうか」
「天女様 率直にお聞きしますが、今後も武田家にご助力頂けると考えて宜しいのでしょうか?」信玄と幸隆が交互に質問してくる、段々と核心に近づいているようだ
「私もルイも,皆さんの事をとても気に入っておりますし 昌幸殿との勉強会で学びました この国は武田家が舵を取るのがもっとも良策なのではないかと ですから、ご迷惑でなければお世話になろうかと考えております」
「おぉっ ありがとうございます!」
と明らかに二人の表情が和らぐ
「もっとも被害が少なく、平和裏に平定出来ることを願います」
2人が大袈裟に頭を下げる
「その。。。我々が天女様に報酬というのも、おこがましいのですが お礼というのはどういったものが望ましいでしょう?」
「そうですね衣食住を保証して頂ければ 特に食が重要です!
あとは勉強会は必要です もし私に嘘の情報を与えたら
その時は、わかりますね?」2人の顔を交互に見て、ニヤッっと笑っておく 効果は絶大であろう
「天女殿 その。。。 あのですな わしを治療してくださった 奇跡の術なのですが。。。あの。。。」男相手には無敵の信玄もエヴァを相手にすると形無しのようだ
「死者をも蘇らせることは可能なのでしょうか!?」業を煮やした
幸隆が信玄に代わり、問いかける
「いくつか条件がありますが 可能です」
「おぉっ て 天女殿にお願いが御座います!!」
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