第17話 思惑
篝火の灯る 浜松城城下で三方ヶ原の合戦において
勝利を収めた武田軍重臣による戦勝報告が行われていた
「にわかには信じ難いが、城内の兵500をあのルイなる若者が一人で殲滅したというのか?」山県の報に眉をしかめる真田幸隆
「ものの30分ほどでな その他にも三方ヶ原で大将首2つ 鉄砲隊殲滅 それがしの護衛をしながら仕留めた雑兵多数。。。
本多忠勝も家康の目の前で一騎打ちのすえ討ち取ったとの事」
「人外であるな 天女様の連れということであるから 不思議では無いのか。。。その天女様を見つけたのが山県殿 1番のお手柄は、山県殿という事になりますな」軍議の場で珍しく笑みを見せる幸隆
「山県殿、馬場殿 その天女様の術により、お館様の肺の病が全快されたようだ 戦傷者もすべて回復している」どよめく陣内
「ということは、もしもあの2人が徳川に就いていたら? わしらは勝てたのか?」馬場信春が独り言のように呟く
「天が我らに勝てと言っているのだ!! そのためにお2人を使わされた」諏訪勝頼(後の武田勝頼)が声高に断言する
「勝頼の言うとおりかもしれんな」黙って家臣たちの話を聞いていた信玄が立ち上がる 以前のような威厳に満ちた声音と立ち居振る舞いに、この場に居るものすべてが歓喜に震える
「信長包囲網。。。将軍義昭公の策にこのまま乗ってみるのも、面白いかもしれんのう そのためにも、あの2人を全力で取り込むのじゃ!!」
軍議は続く。。。
「徳本様? ルイと2人で話したいのですが?」片時も離れようとしない徳本を突き放す エヴァ
「そ そんなっ」この世の終わりのような顔で縋り付く
「私達は、そこの窪地で話をしますから ここから動かないでください いいですね!?」少しきつめに睨む
「随分と懐かれているようだなエヴァ」ルイが皮肉っぽく笑う
「見ましたね!?」右手の指先に雷撃を纏わせ ルイに迫る
「えっ えっ?」目を丸くして後退る
「ですから 見たのですね!? 私の一糸まとわぬ姿を」
さらに雷撃を膨らませる
「見てない! 見てません!! 山県様に聞いてくれ!!!」
「あなたが人様を 敬称で呼ぶなんて 熱でもあるのでは?」
「熱は無いが 山県様は、エヴァを助けてくれた恩人だしな
王国でも、いろんな大人を見てきたけど、あの人は信用してもいいかなって」照れ臭そうに笑うルイ
「大人になったのですね。。。ところでルイ ここが王国とは違う世界 異世界だと気がついていますか?」
「う〜ん 魔法を使うものは居ないし 魔素が濃すぎる。。。。遠い異国では?」
「空を見てみなさい」人差し指を空に向ける
「ん? 月がでかいな〜 んん? 月が1つしかない!!??」
「そうです ブルートの転移術で異世界に飛ばされたようです」
「そんなことがあり得るのか? いくらブルートでも」
「ダンジョンボス部屋という特殊な環境と転移阻害の影響もあったかもしれませんね おそらくブルートでもわからないでしょう 帰れるのかもわかりません」
「。。。それは困るな。。。ブルートを探さないと」
「とりあえずは、帰れないものとして行動しなければなりませんね もちろんアランとブルートも探します」諭すように語る
「アラン。。。」消え入りそうな声で呟くルイ
「どうかしましたか? そういえば私の着替えと予備の杖はルイの空間収納に入れてありましたね?」
「無い。。。空っぽだった 装備も魔石もなんにも無い」
「なんにも。。。? 苦労して集めたのに」涙目の2人
2人の会議は続く
「では、そう言うことですので私は天女、ルイは陰陽師ということで、しばらくは武田軍と行動をともにしましょう
私は、今後の身の振り方のためにも、この世界の情勢を勉強します」
「俺は、何をすればいい?」自分の鼻先を指差す
「そうですねルイは、みんなと仲良くしてください 溶け込んで、この世界の人達を肌で感じてください」
「わかった 仲良くすればいいんだな」
本当に解っているのか少し心配になるエヴァ
浜松城内の片付けも終わり入城する 武田軍一行
本丸内の一室を割り当てられるエヴァとルイ そこに当然のように居座る徳本
真田幸隆が訪ねてくる
「ルイ殿 此度の戦での活躍 聞き及んでおります 武田軍軍師 真田幸隆と申しますお見知りおきを」
「うん よろしく イタッ!」エヴァに尻を抓られる
「はい 若輩者ですが 宜しくお願いします」頭を下げるルイ
やればできるのね〜とばかりに満足気なエヴァ
「お二人に、我が息子を紹介します」一歩横にずれ 後ろに控えていた若者が深く頭を下げる
「真田昌幸と申します 宜しくお願いいたします」
「天女様 この浜松城にいる間 先程の勉強会の続きは、この昌幸に任せることにしております 昼夜いとわず、何なりとお聞きください」昌幸の肩を押し 一歩前へと促す
「お心遣い、感謝します では、早速ですが今からでも?」
「わしが居るのにの〜」不貞腐れる 徳本
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