第12話 クラスメイト達にも拡散 

「ねぇねぇ。あの動画見た?」


「うん。見たよ!」


「まさかな…。時岡の奴、あの綾瀬さんにフラれたらしいぞ」


「やっぱり、綾瀬さんは高嶺の花なのかぁ」


 時岡の告白に関する会話が、クラス内で散乱していた。時岡が思わずTYATTERと口にしたのが原因だった。


「なんだよ。クラスの奴ら! 好き放題飛び付きやがって…」


 ぎりぎり歯軋りしながら、時岡は苛立ちを隠せなかった。吉岡以外の残りの陽キャは、かなり居心地が悪そうだった。


 目の前の現実にはスクールカーストの序列が、明確に露見する。


「ちっ」


 睨み付けるように、時岡は周囲一帯を見渡した。


サッ。


 目を付けられないように、瞬時にクラスメイト達は下方に目を逸らした。その結果、変な形で時岡が周りを見渡した形になった。


「…な、なんだよ。こいつら。ロボットかよ」


 さすがの時岡はたじろいだ。意地を張るように吐き捨て、時岡は吉岡達へ視線を移した。しかし、特に会話などせず、貧乏ゆすりをしながら再び目障りな歯軋りを実行した。


 吉岡を含む陽キャ達は非常に迷惑そうだった。しかし、注意はしない。いや、できないのだろう。叶うものなら、全員が不満を口にしたいはずだ。


 再び、クラスメイト達のひそひそ話が始動した。もちろん、時岡の告白に関する件だ。皆、話のダシにしたいのだろう。


【キュィィー--ン。ティーーン】


 前と同様、新幹線が走るように経験値のラインが青く染まった。限界まで達するなり、ラインから小さい星が散らばった。


【テレレーーン♪♪】


 そんな効果音とともに、ざまぁレベルが上昇した。経験値はラインの最後部辺りまで青く染まる。もう少しでレベルアップするところまで行き届く。


(なっ!?また上がったのか?)


 今回は無意識に吐き出しかけた言葉を飲み込み、胸中で春は疑問を呟いた。急いで、頭上のざまぁレベルを確認した。


(ざまぁレベルが3になってる♪)


 レベルが上がっている事実を認知し、春は以前と同じような成長した感覚を味わえた。同伴するように、幸福感と達成感も生じた。


(相変わらずレベルアップや経験値が貯まる効果音はRPGを疑似体験しているみたいで最高だな~)


 顔に表情が表れやすい性格なので、春は顔の筋肉を働かせ、心の中だけで喜んだ。その証拠に、興奮して身体は熱く、パーソナルスペースでは鼻歌を奏でていた。


(それにしても——)


 隣に座る和へ視線を走らせた春。変人扱いされてないか確認したのだ。


 心配は不要だった。和は読書に夢中だった。ブックカバーで書籍が覆われていた。そのため、ラノベだとすぐに推測できた。それに、基本的にラノベしか和は読まない。


(ざまぁレベルが上がる条件って。…もしかして)

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