月光(仮)

@aruhinoyume000

第1話

朝起きて、ごはんを食べて


たった一人の家族と一緒に働きに出る


昼には自然の中で体を休め


日が暮れる頃には家に帰る


それで、それで


こうやって、月を見上げる


私はそれだけで満足だった

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「なぁ、爺ちゃん」


そう言いながら、ベッドの上で月を眺めるたった一人の家族の近くにすり寄る


「ん、どうかしたかの?」


近くに寄ればベッドの上で微動だにしていなかった爺ちゃんはこっちを向いてくれる

真っ白な髪に、こちらをじっと見る、まるで太陽みたいな金色の眼

皺の多い、でも村の爺さん連中と違って生き生きとしたその顔を見るとなぜか凄く落ち着く


「へへっ、なーんでもなーい」

と言いながらごろりと爺ちゃんの膝に頭を乗せる、こういう時は小さい頃にねだった、このとても大きなベッドが役に立ってくれる、今日で成人した自分とデカい爺ちゃんが二人乗ってもミシリと小さな音を立てるだけだ


「これこれ・・・、まったくいつまで経ってもお前さんは」

苦笑しながらも撫でてくれる爺ちゃん、うん、やっぱり爺ちゃんの近くはとても落ち着く、しわしわに見えてとってもがっちりした体、少し低い体温、嗅ぎなれた森の匂い、そして・・・


「爺ちゃんの声、やっぱり落ち着く・・・・」


「もうお前さんも15になるだろうに、甘えん坊じゃなぁ」


「まったく、まったく、しょうがない子じゃ・・・」


「へへっ、怒られちゃった」


最近、聞きなれた爺ちゃんの小言も気にならない、爺ちゃんの傍が落ち着くのは本当だしそれに、そう言いながらも撫でる手は止まらないし、声はとても嬉しそう

なんだかんだ、爺ちゃんも甘えられて嬉しいに違いない、調子に乗って爺ちゃんの腹に顔を押し付ける、匂いが強くなる、落ち着く・・・


「・・・・少し良いか?」


「んー?」


「お前さんも今日で15歳、成人じゃ」


「そうだね」


「・・・・このままで、良いのか?」


「・・・うん、このままで良い、朝起きてごはん食べて、働いて疲れて帰ってきたら、こうやって爺ちゃんと一緒に月を眺めて、ずっとずっとこのままで」


「・・・ずっとは無理じゃなぁ、儂ももう60を超えた、いづれ死ぬ」


「大丈夫、爺ちゃん村の連中より全然元気だし、あと100年くらい生きれるよ」


「100か、んーむ30いや40ならなんとかなるかのぉ、さすがに100はエルフでもないし難しいのぉ」


「あ、30~40はなんとかなるんだ、じゃぁ後それくらいはこのままで」


そう言いながらもう話は終わりとばかりに、爺ちゃんをベッドに引き倒す、もう夜も遅いし明日に備えて寝ないとね、ともっともらしいことを言いながら爺ちゃんを抱きしめる


「っとと、これまだ話は・・」


「爺ちゃん」


まだ話そうとする爺ちゃんの声を遮る、爺ちゃんの声は確かに落ち着くし大好きだけど、もう今日は


「明日も早いんだし、もう寝よう、ね?」


「・・・・・・」


聞きたくなかった

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