ほつれた糸をたぐり


 幻聴だろうか、夕暮れどき、自転車に跨るとひぐらしの鳴き声が聞こえた

 公園の方角だった

 鳴き声は一匹で、子どもの歓声に混じっていた

 人は世界をなにで認識するのだろう

 目でみたものか

 耳できいたものか

 それとも匂いか

 耳朶に響く、幻かもしれないその音が

 かつて住んでいた町の音を想起させる

 いまなおそこに住んでいる人々を

 思い起こさせる

 会いたい 戻りたい

 子どもでいたい

 わたしは過去を愛している、そうおもった


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