万年筆
母はかつて
モンブランの万年筆を愛用していた
森のような深緑色の
美しいペンだった
あまりに大切にしているので
わたしも欲しいとねだると
じゃあ大人になったら
色違いにしよう、と
青い万年筆を
買ってあげると 若い母が言った
夜ご飯を食べた帰り
オレンジの街灯に照らされた
どこかの学校のフェンスの
かたわらを歩いていたわたし達
果たされなかった
遠い約束
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