カニカマをくれた男の子


かつてカニカマをくれた男の子

同じマンションの四階に住んでいた

夜、君の家には

いかにもな風貌をしたお父さんと君がいて

わたしは君から唐突に

カニカマを貰った うす暗い玄関で

わたしはカニもかまぼこも嫌いなのに

嫌いとは言えずにもぐもぐ食べた

たしか小学校に入学するほんの少し前のこと


やがて月日が経ち

わたしは君の卒業文集を見た

父子家庭の訳を知った

お母さんは病気だったのだ

病気の人のため

僕は医者なると書かれてあったが

あの町の例に漏れず

君はヤンキーになりました

もやしのようにひょろひょろしてたのに

いつしか 肌は黒く 顔つきはいかつく

声はドスをきかせ

体格はゴリラのようになりました


わたしは君の姿を見かけるたびに

思い出さずにはいられなかった

カニカマ、くれたのにな……

今でもカニカマを見ると思い出すし

やっぱり味は苦手なまま


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