夜が詰め込まれた


 目蓋を開くと

 誰もいない家に夜が集まっていた

 ご飯の支度も

 そのままになった洗い物も

 主婦には主婦の仕事があるけれど

 わたしは何も手がつかなくなって

 ダイニングテーブルのイスに腰をおろし

 LEDに染められた

 濃密な夜を眺めている


 家族がひとたび足を踏み入れると

 不思議なことに

 夜はさあっと散って行った

 そうしてわたしは正気に戻って

 母親に戻って

 あるいは妻に戻って

 笑顔でおかえりと口ずさむ


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