君があまりに嘆くから


 君があまりに嘆くから

 おいでと呼んでも来ないから

 傍まで行って抱きしめました

 泣き止んだ君はわたしの腕の中で

 じっと耳を澄ませている

 グツグツお湯が煮えている

 ヤカンの蓋の踊る音が

 リビングの静寂を浮き彫りにする

 

 君があまりに嘆くから

 生きることが辛くなります

 本当は誰も彼も赤児のままで

 そこから成長などできないのに

 年だけ重ねて大人になります

 むずかることを許されない人たちは

 家でひっそり宵口みたいな

 心を抱えて過ごしています

 これ以上傷がつかないように

 馬鹿だ馬鹿だと笑われないように


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