へその緒


 明かりを落とした寝室で

 手を翳して五指を握り込む

 小さなブラックホールができたと眺めていたら

 寝付けない君が私の腕を取って

 自分の腹の上に乗せた


 その小さな掌の熱さ

 これには何という名前がついているのだろう


 愛は理性から生じるのだろうか

 年々冷えてゆく自らの心を布団に委ね

 君の掌の熱さは愛なのかもしれないと


 もしそうならば愛は

 理性の外にあって

 なおかつ

 息を潜めている


 春を待つ草花のように

 若しくは

 孤独な子どものように


 だれかに見つけてもらうのを

 息を潜めて待っている


 

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