絵を描くおじさん



 駅前の歩道に座り込んで

 煙草屋の猫を模写するおっさん

 水彩色鉛筆と絵の具を使って

 血統書付きの猫に色をつけている

 温かい絵だった

 いいなわたしも

 あんな余生を送りたい


 景色を紙に閉じ込める作業

 色をなぞって恋焦がれる作業

 けれど葛藤がある

 わたしが目にする感動は

 どう工夫してもキャンパスに描けない

 どう工夫してもあの色を作り出せない

 模写は二次創作だよね

 神さまのオリジナルが一番美しい

 また絵の具に触りたい

 無数の色に意識を染められたい


 

 

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