俺ンちの倉庫異世界~村から街から国へ至る建国しつつ村人達強すぎなんですが!!~

MIZAWA

第1話 日常が破壊されるけどやはり日常

 流川アダンは毎日パソコンのデータ入力の仕事をしている。

 今年で30歳になるお兄さんなのかおっさんなのか悩むが、たぶんおっさんだ。

 俺は今日も一人ぼっちで会社の片隅でデータ入力する。

 特技はデータを丸暗記するくらいで、俺の日常は空しい程空しい。


 趣味はシミュレーションゲームで国造り系だ。戦争系だとストラテジーと言うが、自分はひたすら建国していくゲームが好きで、それをやっている。


 よく国が財政破綻とか侵略されてゲームオーバーになっている。

 それでもその過程が大好きなのだから仕方がない。


 あと、昨日だけど両親が飛行機事故で死んだ。

 今俺は自宅にて茫然としている。

 実家暮らしと言う事もあったが、いつも部屋にこもってゲームばかり仕事ばかりしてきたので、この家の事を何もしなかった。


 そう豪邸なのだ。

 プールすらついているし、お客様用の部屋が20部屋はあるし、各部屋にシャワールームがある。


 しまいには共同温泉なんてあり、男湯と女湯があった。


 両親が亡くなった事で、召使い達は辞めていき、今この豪邸は朽ち果てていた。


 俺は途方にくれながら、この豪邸を売ろうかとか考えている。

 ひっそりとどこかのアパートを借りて過ごしていこうかと思っている。


「そういえば」


 倉庫があったはず、何かあるかなーと思いながらとぼとぼと歩く。

 スーツは未だに着用したまま、ネクタイを緩ませながら、地下の倉庫の扉を開いた。


 そこはありえない広さの空間だった。

 学校程もある広さで、沢山の木箱が並び、あらゆる専門的な道具や機材がしまわれてある。


「これやべーんじゃ」


 刀なんてものもあったり、しまいには拳銃なんてものもずっしりとある。


「これ捕まるんじゃ、俺やばいじゃん、両親とんでもないもん残してるし」


 あらゆるものと言えば、畑仕事関係の物や商売関係のもの、なぜか糸とか素材もあったり。


「父さんと母さんは一体何をしてたんだ」


 その時だ奥の方に厳重に鍵で固められた扉があった。

 どうやら倉庫のようで、倉庫の中に倉庫がある感じのようで。


 俺はゆっくりとゆっくりと近づく。

 すると魔法でもかかっていたのか、自動で扉の鍵が外れた。

 きぃと嫌な音を響かせて扉が開き。

 ゆっくりと俺はノブを掴む。


 次の瞬間、遥か空にいた。


「はへええええええええ」


 遥か空から俺は落下していた。

 信じられないことにそこは見た事もない世界だった。

 果てしなく大陸が続き、果てしない海が続き、見たこともないドラゴンみたいな奴が空を飛んでいる。

 宇宙を見ると、お月様が3つあったり、見た事もない惑星が浮かんでいたり。


 体は落下し続ける。

 気づくと、ぼろぼろの神殿の跡地に立っていた。

 

 跡地には出口と日本語で書かれてあり、それに触れると、倉庫の前に戻っていた。


「あれ、どういう事だ?」


 俺は焦りながら、もう一度ノブを掴むと。また神殿の跡地に立っていた。


 どうやら最初だけこの世界の景色を見せつけられるらしい。


「はぁはぁ、これが異世界って奴か」


 辺りを見回すと、そこはかつて村があった場所のように見えた。

 ぼろぼろに朽ち果てた姿。

 何もかもぐちゃぐちゃになり、誰も住んでいないと思われるのだが。

 動物が3匹こちらを見ていた。

 

 なんだろうと近づくと、犬と猫とオウムだった。

 彼等はこちらをじっと見ている。


 そういえばポケットに団子があったと思いつつも、3個しかなかったが、3匹に与えると、3匹は元気よくむしゃりむしゃりと食べた。


「ありがとう」

「助かったわ」

「命からがらじゃて」


「えーと耳がおかしくなったかな」

 

 3匹の動物は突如として話し出した。


「あ、君は向こうの人だよね、服が見た事ないし」

「なら説明しといたほうがいいわね」

「だろうなぁ、面倒くさいがのう」


「一体どういう」


「ここはアルデンシアと呼ばれる世界、君がいた世界とは違うんだ」


 犬が教えてくれる。


「アルデンシア?」


「向こうの人が言うにはここを異世界と呼ぶよ」


「へぇ、あれか、なんか想像がつくよ」


「それでお願いがあるんだけどさ」


「なんだい」


「この村を復興させてほしいんだ。この森は果てしない森と呼ばれていて、凄く危険地帯で、村の1つは必用で」


「ちょっと待って、危険地帯に村を造るの?」


「ここには不思議と人が集まってくるんだ。その人達の為に、あなたの力が必用です」


「ふむ、国造りはゲームでしかやった事ないしな」


 俺は腕組みしながら考えると。


「あ、団子持ち込めたって事はそうか、そういう事か、父さん達はこっち着て色々やってたのか、でもなんで滅びてたんだろこの村、なんか力になれそうだよ」


「ほんとー」


 俺がやるべき事は簡単な武装をして、自分自身を守りつつ、畑や建物を作り直す事だ。


「村の形が出来上がったら、わしが村人を探してこよう」


 オウムがいかめしい声で教えてくれた。


「私は偵察してるわ」


 猫が可愛らしい声で頷くと。


「僕は君の手伝いをするよ、後は君の護衛ね」


 犬が少年みたいな声で頼もしい事を言ってくれる。


 この日より俺ンちの倉庫は異世界だって事が分かり。

 異世界にしまわれた無数の道具や機材を使って村を造っていく計画を立て始めた。

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