俺たちのハッピーエンド!
茶々丸
エピローグ
―二人の出会いは、約二年ほど前まで遡る。
「…」
キィ、と。
広間の扉を開け、薄暗い会場に入ってきたのは金髪の少年。
大型ナイフを片手に持ち、ゆらりと姿を現したその少年の目は鬱々と、しかし、爛々と紅い光を放っていた。
「…ねえ」
少年がぴたりと広間の中央に備え付けられた長机の前に立ち止まり、そう声をかけたのは、目の前で突っ伏している水色髪の少年。
すぅすぅと気持ちよさそうに寝息をたてていたその少年は、うっすらと目を開けると、片手で眼をこすりながら、どこか面倒臭そうにゆっくりと体を起こした。
「…何?」
「君が今回のもう一人の【人狼】?」
金髪の少年が、恐ろしいほど平坦な声で彼に尋ねる。
金髪、といってもその髪はしばらく染めていないのか、まともに手入れをしていないのか僅かに伸び切り、部屋のほの暗さと相まってどこか薄汚れているように見えた。
ちなみに人狼というのは、今回彼らに与えられた重要な役職の名前だ。
水色髪の少年は、渋々頷く。
「…そうだけど」
「最短で村人を全滅させたい。協力してほしい」
こちらが何か聞く前に、金髪の少年は早々と自身の目的を口にした。
何故、と疑問に思う暇もなく、彼は間髪入れずに続ける。
「このゲームの出資者の中に、俺と姉ちゃんを売った兄貴がいるんだ。…だから殺したい。そのために、運営側に回る」
「…」
水色髪の少年は、ちらと目の前の金髪の少年に目を向けた。
淡々とそう話す彼の瞳にはもはや感情はなく、復讐に駆られた、鈍い憎悪の炎がただ炎炎と燃え盛っている。
―殺す。何があっても。
何を犠牲にしても、何を見捨てても、自分の命を賭けてでも。
今ここでお前を八つ裂きにしてでも、必ず殺してやる。
そんな言葉がびしびしと肌に伝わってくるほど、金髪の少年の目と声は、凄まじい怒気と殺意に満ち溢れていた。
その瞳孔を見開いた、まるで飢えた獣のような、赫焉と輝く紅い瞳。
「…」
…今思えば、これが始まりだったのかもしれない。
なぜなら水色髪の少年は、この時。確かに彼の瞳に見惚れてしまっていたのだから。
「…ふは、」
水色髪の少年は突如そう吹き出すと、ギッと静かに椅子を後ろに引いた。
くつくつと腹を抱えて笑いだし、やがてはうっとりとした恍惚な表情を金髪の少年へと向ける。
そして。
「っ!」
「…いいよ、協力してあげる」
ぐい、と突如片手で彼を勢いよく引き寄せると、もう片方の手で、隠し持っていた大型ナイフを少年の喉にび、と押し付けた。
薄皮がはがれ、まるで赤い糸のような細い血が、つーっと彼の首筋を流れ落ちる。
その瞳は、彼と相反する、毒々しい蒼炎の色をしていた。
「その代わり。…君の決意、僕にも見せて?」
これが、後に観測史上最凶と言われる、元プレイヤーの運営人、
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