第47話 47

47


私の名前は笑顔えがお万歳まんさい、宗教法人 一生笑顔スマイリー教の教祖だ。

少し前に厚生労働大臣の五反田ごはんだ先生に是非とりこにしたい人物の情報を聞いて、私は久しぶりに心が湧きだった。

早速、シグナルスキャンとやらにメールを送り呼び出した。

そして私の華麗なる座禅を見せ説法を聞かせ、そして私の十八番である人を落とす十八番おはこを披露したのだが、シグナルスキャンは慈善事業などやらないと言って来た。

私は苦渋の決断で実弾おかねを机の上に置いたが、奴らは逃げるように私の前から立ち去った。

シグナルスキャンよ私からそう簡単に逃げれると思うなよと思いながら、私は五反田ごはんだ先生に失敗の連絡をした。

五反田ごはんだ先生からは笑われ私は苦虫を噛んだ。

それから少し日が経った頃、五反田ごはんだ先生と以前一緒に居た城島じょうじまと言う男から連絡があり会う事になった。


「お久しぶりです、笑顔えがお万歳まんさい先生」


私の前にメガネを掛けた城島じょうじまが現れた。

この男はどうにも心の中が読めない男だ。

いや、読めないと言うよりもつかめないと言った方がいいのかもしれない。


「うむ。前は五反田ごはんだ先生と一緒に来て以来かな」


「そうですね。今日は早速ですがお願いがありまして伺いました」


「聞こう」


「既にご存じかと思いますがシグナルスキャンと言う男の身辺調査をお願いしたいです」


「詳しく」


「今度シグナルスキャンが会社を興そうとしていて、新しく店舗を借りました。その店舗の内部調査及び周辺調査をお願いしたいです。後、その店舗に出入りする業者などがあればそこら辺もお願いします」


「ふむ…やけに先生もあの男に入れ込んでいると見えるな」


「そうですね、私もその意見に同意しますがこれはあくまでも仕事と割り切っていますのでご了承下さい」


「予算は?」


「150~200で収まりますか?」


「ふん!そう言う時は収めてくれと言った方がいいんじゃないのかね?」


「いえ、一応先生から私に一任されていますので余り強くは言えません」


「まあ良い、予算はいくらでもいい、依頼は受けよう」


「ありがとうございます」


私は考えた。

城島じょうじまも私が取り込めばもう少し動きやすくなるのではと。


城島じょうじまさんよ、この後時間はあるかね?」


「何かあるのですか?」


「なに、一杯やりながらお前さんの好みの女を当てがおうと思ってな」


さあ、乗ってこい!私は口角を上げて城島じょうじまを見る。


「申し訳ございません」


城島じょうじまは頭を下げた。


「お誘いは嬉しいのですが、私は一定以上立ち入らない主義を貫いていますのですみません」


チッ残念。


「まあ、良い。とりあえず依頼は了承した。進捗は連絡する」


「それでは失礼します」


そして城島じょうじまは教団から帰って行った。


さあ、仕事だ。

私は有能なる信者を集めてシグナルスキャン包囲網作戦を開始するのだった。


*


私の名前は城島じょうじま真司しんじ

厚生労働省に所属している。

最近の私は忙しい。

忙しくなった理由はシグナルスキャンと言う占い師と絡むようになってからだ。

最初は先生の病気占いが終わればこの占い師とも終わりと思っていたがそれは違った。

占いを受けた先生はどうもかなりシグナルスキャンが気に入ったとみられる。

そんな中先生に食事に誘って貰い先生の意図を聞かされ私は驚愕した。

私はとんでもない男と対面していたのだと。

さらに付け加えるならば、より多忙になる未来しか見えないと言う事だ。

私はお気に入りのブラックコーヒーの香りを嗅ぎながら今日も出かけるのだった。


*


新しい店舗に家具配送のトラックが来た。

とても笑顔の若い二人の女性が声を掛けて来た。

俺は安藤さんと共に配送の二人に家具を置く場所を指定して行った。

応接セットは二階へその他は一階を指定した。

家具の配置は40分程で終了し受領書にサインをして、笑顔の配送業者は帰って行った。


「なんかとても笑顔が身についていた二人だったね」


俺はそんな事を安藤さんに話した。


「でも、少し笑顔が怖かったような気もしたんだけど」


「そうかな?女性と言うより人は怒った顔より笑顔の方が良くない?」


「確かにそうなんだけど、何かが引っ掛かるような気もするんだよね」


何か安藤さんはブツブツと言っていたが俺はそこら辺はいつも通りにスルーした。


「それで安藤店長!次はどうする?」


俺が声を掛けると安藤さんはハット顔を上げて笑顔で答えた。


「早速開店に向けてシミュレーションを行うわよ!」


「シミュレーション?」


「そうよ。とりあえず鈴木君がお客になって店に入る所からまずはスタートね。占いの場面では逆に私がお客になるから」


そんな安藤さんの提案により、俺達は1時間も同じような行動を繰り返し、何が不足しているかのピックアップをしていった。


-


「まずお客さんが来て受付で順番の番号札を取るのだけど、本当は回転ずしとかであるような自動発券機が理想なんだけど、最初からお金は掛けたくないから木札で代用しようと思う。流れは木札を取って順番が来たら占いを受けて貰って、占い結果と木札を受付に持って行き精算する流れかな」


俺は思わず安藤さんの提案に拍手を送った。


「凄いよ安藤店長。俺の想定遥か先を行ってるよ」


「ふふふ、そうでもないわよ」


安藤さんはご機嫌だ。


「それから営業日なんだけど、以前鈴木君と話した通りに固定日は水曜日のみとして、その他の営業日はホームページで知らせる流れでいいかな」


「うん、それでいいと思うよ。まだ城島じょうじまさんから返事は来ていないけど、その他にもショッピングモールの営業の事もあるし当面はそれで行こう」


そして俺は昨日寝る前に重大な事を思い出していたのを思い出して伝える。


「それから店の看板がないんだけど考えてる?」


「えっ!?鈴木君が考えてるんじゃないの?」


それから俺達はあーでもない、こーでもないと案を出し合いやっとの事で決定した。


看板『シグナルスキャンの病気占い~あなたの体に隠れている病気を占いで発見します~』

ホームページの言葉そのままになった。

話し合いは何だったのかと思うかもしれないが話す事が重要なのだ。

それから俺達は看板を発注し開店準備を進めるのだった。


そんな時に又依頼メールが届いた。


差出人『南出田狼ナンデダロウ神社 

    次期神主 田所たどころ はじめ

    電話番号 000-7101060-8989-04510 』

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