第312話 ははーん



フィリア王女と微妙なやり取りがあったステラさんだが、最終的には化粧水片手にルンルンで去って行った。

そんなこんなで

いろいろとごちゃごちゃあったものの、とひあえずはロナルドさんに新たな宿屋の話は出来た。

とはいえ、王都に向けて旅立ってしまったので取り掛かれるのは帰って来てからになりそうだ。

俺としては一刻も早くお願いしたいころではあるが、ルート商会の未来を考えたらやむを得ないだろう。



「で、これから私たちはどうするの?」



それな。

ノエルさんの言う通りなんだよ。


ロナルドさんがゼスト国王からの返答を持ってくる以上、俺たちもフィデールもしくはその近くからそんなに離れられない。

グランツやコスタにも何とか行こうと思えば行けるのだが落ち着いて滞在は出来ないだろう。

エピリシアにいた間はずっと落ち着かなかったから、ちょいとここらでゆっくりするのもアリなんだよな...。



「ゼスト国王からの返答を待たなければならないというのもありますが、俺としてはフィデールでちょっとゆっくりしたいというのが正直なところですね」


「わかった。それでいいよ」


「えっ?! いいんですか?」


「何だかんだ、私たちエリシオンもここまでの強行スケジュールをこなしたことはないからさ、疲れてるといえば疲れてる。いつも言ってる気がするけど、シーマくんの料理があれば何も問題ないよ」



まぁそれはそうだよな...。

王都からここまで、サザンベールを除けばほぼノンストップで駆け抜けてきたんだ。馬車移動とはいえ疲れるものは疲れる。それは仕方のないことだ。

料理かー。

まぁ、そんな理由であっても喜んでもらえるのは嬉しい。



「無理矢理付き合わせてしまってすみませんでした。この宿で料理を作らせてもらえるかはわかりませんが、作れる時は頑張りますので」


「えっ?! ダメだよそんなの。ボクがウチらの貸切にするように言ってくる!!」


「「…」」



俺とノエルさんの会話を近くで聞いていたシェリルが、突然そう言って出て行ってしまった。俺とノエルさんは唖然として見送るしかなかった。



「シェリルの行動はありがたいわ。私はオルティアではそれなりに知られちゃっているし、クラリスは今正体がバレると面倒だからね。少しでも人目につかないほうがゆっくりできるわ」


「そうですね。フィリアの言う通りです」



確かにそうだな。

俺もそう思う。

でも、シェリルがそこまで考えていたのかは怪しいところだけど苦笑




「貸切の件は何とかしてきた。何日いても大丈夫だよ」



しばらくしてシェリルが帰ってきた。

そんなに何日もいるわけじゃないとは思うけど、その辺はロナルドさん次第だからな...。



「シェリル、王都まで往復するとどのくらいかかるんだ?」


「うーん...。往復だけだったら14日くらいかな。1日滞在するとして、約15日くらいだと思う」


「それならだいぶゆっくり出来そうだな」


「そうね。逆に暇になり過ぎるかもしれないわね」


「セレナはポーション作りがあるから暇にはならないと思うぞ笑」


「あ、そっか笑」


「僕たちは街の外に出てもいいかな?」


「クリスさん達は自由にしてもらっていいですよ。狩りに行ってもらってもいいですし。ただ、帰らない時だけは予め言ってもらいたいですけど」


「シーマくんの料理が待ってるのよ。何があっても帰ってくるから安心して笑」


「「ハハ...」」



ノエルさんの言葉にクリスさんとイースさんが苦笑いしている。

そんなに気にしなくてもいいんだけどな。



何にせよ、とりあえずは暇にならなくて済みそうだ。




「あのさ、シーマくん...」


「はい?」



フィデールでの休暇計画?の話が落ち着いた頃、クリスさんが小声で話しかけてきた。



「遮音の魔道具貸してくれないかな」


「いいですよ」



俺はアイテムボックスから取って、すぐにそれをクリスさんに渡したのだが、クリスさんはそれを少し慌てながら自分のアイテムボックスに入れた。



ははーん。

そゆこと...。



ん?


俺も他人事じゃなかった!!


今日の夜から気合いを入れねば!!





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