第39話 冒険者ギルド再び



あとは冒険者ギルドか。

というか、モニカだな。


前回はいろいろあっただけに、今回は何もなければいいなと思いながら冒険者ギルドの扉を開けると、俺たちに気付いたモニカが手招きしてきた。



「聞いたわよ、セレナ大変だったわね。もう大丈夫なの?」


「えぇ。エテルナさんが助けてくれたから軽いキズくらいで済んだのよ」


「それで今日はどうしたの? まさか、結婚の報告?」


「…」



いやいや、無言は肯定してるってことだからね、セレナさん。

間違ってないよ。

間違ってないけど間違ってるような…。



「セレナ、あなたまさかホントにシーマと…」


「結婚っていうか、婚約?」


「そんな…嘘よね?」



嘘じゃないんだな、これが。

あー、

セレナは顔を赤らめて俯いてるし…、

モニカは顔を青くして沈んでるし…。

しょうがないな、取り敢えずこの場を何とかしないと。



「本当ですよ。

ただ、これから2年くらい冒険に出る予定なので、その後に結婚する形かな」


「シーマまで…じゃあ本当なんだね…」


「そこでモニカに聞きたいんだけどさ、これからグランツに行くつもりなんどけど何か情報ある?」


「えっ?この街出て行くの?」


「俺たちセレナのことがあってから、強くなろうって決めたんだ。精龍亭を休業して2人で各地を冒険する予定なんだよ」


「2人で冒険…」



あのー、そっちの話題から逸れたいんですけど。

精龍亭の休業のほうに食い付いて欲しかったんだけど、壊れかけてるモニカには裏目に出たな。

どうしよう。

テキトーに流してみるか…。



「強くなるのが最優先だから。それに最初はセレナだけだけど、その後のことは分からないな。(パーティ作って旅する人が)増えるかもしれないし」


「そ、そうよね! ずっと(奥さんがセレナだけ)って決まったわけじゃないものね」


「必ず(この街に)戻ってくるからさ」


「わかった。ちゃんと(私の元に)戻ってきてね(❤)」



ついさっきまで沈んでたモニカが急に物分かりが良くなったのが気になるな。

都合のいい解釈をしてなければいいが………。

まぁ、とりあえず納得してくれてるから良しとしとくか。



「それじゃあ(街に戻ってくるまで)待っててな、モニカ」


「ええ。いつでも(奥さんになる準備して)待ってるわ。気をつけてね(❤)」


「!」


「ちょっと、モニカ!」



いつもはあっさりとした見送りだったけど、今日は俺の腕へとカラダを押し付けるように絡み付いてきた。

俺もビックリしたけど、どうやらセレナも同じようだ。

腕から伝わる柔らかい感触にドキドキしてしまうけど、セレナの手前何か出来るはずも無い。

他の冒険者、特に男性からの突き刺さるような視線が痛いなー。



「ちょっとくらい(未来の旦那を借りても)いいじゃない!」


「もう!そんなことしなくても(そのうちこの街へ)戻ってくるのに…」


「そ、そうだよ」



うしろ髪を引かれながらも、腕から優しく引き剥がすと、モニカは笑顔を浮かべながら小さく両手を降り出した。



「じゃあ、ちゃんと(私の元に)戻ってきてねー!」



俺たちも手を振りながらギルドの出口へ向かった。



嫉妬と好奇の視線を躱しながら……。



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