第23話 剣技
セレナとの二人三脚で宿屋精龍亭を継ぎ始めて3ヶ月が経った。ということは、俺がこの世界に転生して3ヶ月でもある。
相変わらず朝食のみの提供だが、異世界の知識を取り入れた料理が好評だったお陰で、何とかお客さんを大きく失うことなく、というか少しずつ増えてる?!状態でやってきている。
俺もセレナもこの生活に慣れてきたせいで少しだが余裕が出来てきた。
セレナは1人で買い出しに行けるようになったし、俺も夕方頃に時間が空くと剣を振るようになった。
「おっ!シーマ、また冒険したくなってきたのか?」
依頼を終えて宿に戻ってきたフォルティスさんに声をかけられた。
「いえいえ、俺はこの宿屋の亭主ですから。でもたまには剣を振らないと鈍っちゃいますからね」
「そうだな!いい心掛けだ。 どうせなら俺とやろうぜ」
「えっ?」
フォルティスさんとやれるのは嬉しいけど、この人結構熱くなるんだよなー。
でも、そんなこと言ってられないよな。
Aランクに指導して貰える機会なんてそうそうないんだ。
「わかりました。ご指導お願いします」
「よし! そうこなくちゃな!」
俺が渡した木製の剣を受け取ってフォルティスさんがニヤニヤしている。嫌な予感しかしないが仕方ない。木剣を構えて対峙する。
当たり前だが隙がない。
自分から打ちに行くのか迷った矢先に、向こうの剣が襲いかかってきた。左右からの連撃にこちらは躱すので精一杯だ。
追い込まれながらも連撃が終わる頃を見計らって追撃を狙うが、なかなか剣の雨が止まない。
「シーマ、受けてばかりでは勝てないぞ!」
「だったら、手加減して下さいよ!」
「それでは、訓練にならんだろうが!」
そもそもレベルの差に加えて経験の違いがあるんだ。そう簡単にいかないよな。
ん? 経験の差か...。ちょっと試してみるか。
俺は受ける剣の勢いを利用してバックステップで後ろへ飛んだ。
そしてすぐに剣を腰に構える。
相手が動き出した瞬間に、こちらも居合抜きの要領で受けて弾き、そのままの勢いで斬り掛かる。
「はぁ!」
「くっ!」
それでも上手く躱されてしまうが、フォルティスさんの余裕を少しでも崩せたのならいいのかな。
「あまり見ない動きだけど、それもシーマくんらしさなのかな?」
どこからともなく声がして、俺らは動きを止めてそちらに目をやると、エリシオンのクリスさんがこちらに向かって歩いてきている。
「クリスか。お前もやるか?」
「フォルティスさんさえよければ。こんな絶好の機会を逃すほど馬鹿ではないので」
エリシオンの躍進はクリスさんによるところが大きいと聞く。ここでその片鱗が垣間見れるとあれば、俺にとっても充分時間を使う価値があるだろう。
「俺からもお願いします。クリスさんともやってみたいです」
「シーマにクリスか。面白いことになってきたな!」
3人の模擬戦はこの後も続いていくことになり、俺はもちろん、クリスさんも強くなっていくのであるが、
この時はまだ、
この時間の意味を知らないでいた。
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