電話ボックス。


 人通りの少ない道に、電話ボックスがある。


 携帯の普及に伴って淘汰されたというが、公衆電話が地域に有ると災害時に便利だという。


 平時には無くても困るということはないが、災害時にあった方がやはり便利だと絶滅を逃れた。


 むしろ、また普及して来ているらしい。


「なにしてるの?」


 そんな電話ボックスを、幼馴染がガムテープでぐるぐる巻きにして封印していた。


「あ? イタズラ?」

「怒られるよっ!?」

「気にしねぇ」

「男らしいけどっ、むしろ気にしてっ!?」

「っつってもな? これ、電気通ってねーんだよ」

「え?」

「なのに、鳴る・・んだぜ?」

「は?」


 瞬間、ジリリリ! という音がした。


「うわーっ!?」


 怖くなって逃げ出した。ら、


「あはははっ! びびってやンの!」


 幼馴染が笑った。そして、スマホを見せる。


「イタズラっ!?」

「はははっ」

「ヒドいよっ!? なんでこんな」

「いや、掛かって来た。電話が」

「え・・・ど、どうするのっ!?」


 ジリリリと鳴り続ける着信音に、鳥肌が立つ。


「おう、もしもし?」

「取ったっ!?」

「・・・」

「な、なんて言ってるの?」

「ん。わかった」


 そう言って、電話を終える幼馴染。


「そろそろ帰って来いってさ。母さんが」

「なんだ、おばさんか・・・」


 タイミングが悪過ぎる。


「でもさ、黒電話の音になんか、着信音設定してねーんだよな?」


 首を傾げる幼馴染。


 ざわりと、背筋が粟立った。


「え?」

「んじゃ、帰るわ」

「ま、待って! 俺も行く!」


 幼馴染のイタズラが原因だったのか、その後あの電話ボックスは撤去されていた。


 俺の幼馴染は、視える人だ。

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