第2話

 あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。ある日のことです。二人はいつものように散歩をしていました。すると、道ばたに大きな石がありましたので、試しに二人で持ち上げてみることにしました。


「ふんっ、うおおおぉぉぉぉっ!!」


 しかし、びくともしません。どれだけ力を入れても、ちっとも動く気配がないのです。それでも諦めずに頑張っていると、だんだんと体が温まってきました。そしてとうとう、二人同時に持ち上げることができたのです。


「やった、成功じゃ!! さあ、この石を家まで運ぼうかのぅ」


 ところが、石を持ち上げた瞬間、二人の体はみるみる小さくなってしまいました。そう、これが本当の姿なのです。実はこの二人の正体とは、むかしむかしの昔話に出てくるような、あの有名な『一寸法師』だったのです。しかし、そんなことはもうどうでも良いでしょう。なぜなら今はもう平和そのものなのだから。


 さて、二人が家に帰り着く頃には、もう日が暮れかけていました。そこで、今夜はささやかな宴を開くことにしたのです。酒やご馳走を用意しているうちに夜になり、いよいよ宴会の始まりです。どんちゃん騒ぎをしながら、楽しいひと時を過ごします。やがて夜は更けていき、やがて朝になりました。


 目を覚ますと、そこは見知らぬ森の中でした。どうやら昨日の出来事は夢ではなかったようです。これからいったいどうしようかと考えていると、向こうから一人の老人が歩いてくるのが見えました。老人は言いました。


「おやおや、こんなところで何をしているのですか? よろしければ家へいらっしゃいませんか」


 二人は喜んでついてゆくことにしました。しばらく歩くと、一軒の小さな家が見えてきました。中に入ると、そこにはたくさんの食べ物が用意されていました。


「どうぞ好きなだけ食べてください」


 そう言われたので、遠慮なくいただくことにしました。お腹いっぱい食べた後は、家の中を案内してもらいました。とても広くて立派なお屋敷ですが、住んでいるのは二人だけのようです。なんでも、遠い国からやってきた旅人だということでしたが、詳しいことは分かりません。その後もしばらくは三人で仲良く暮らしておりましたが、あるときを境に二人とも姿を消してしまいました。どこへ行ってしまったのか、今となっては誰にもわかりません。ただひとつ言えることは、今ごろあの二人もどこかで幸せに暮らしているということです。おしまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る