第6話
「ベンジャミン様、ごきげんよう!今日はどんな魔法を見せてくださるのですか?」
『マティルダは今日も元気だね』
「先週、ベンジャミン様が教えてくださった魔法はなんとかマスターできましたわ」
『そう。マティルダはすごいね』
「ベンジャミン様の教え方が上手なのですわ」
ベンジャミンは最強の魔法使いの名前に相応しい力を持っていた。
そのお陰で、マティルダの魔法の力は更に成長することとなった。
上手く言葉にはできないが、今までの講師達とは違い、魔法を根本的に理解しているような気がしていた。
それに教え方が上手いのも魔法が上達する要因だろう。
その証拠にマティルダの雷魔法は以前の数倍の力を発揮するようになった。
それに感動したマティルダはベンジャミンの指導を受けないかと、兄のライボルトも誘ってみたのだが「調子に乗るな」と一蹴されてしまう。
純粋な親切心から言ったのだが、どうやら嫌味と捉えられてしまったようで、かなり怖い顔をされてしまった。
こうしてまた兄妹間の亀裂は深まっていってしまう。
(余計なことしなければよかった……!)
ベンジャミンと魔法訓練として森に出かけた時には空を飛んだり、突風が刃のようになったり、火や水を手から出したり、指を鳴らすだけで花を咲かせたり、雷で大木を真っ二つにしたり……。
マティルダと侍女達は、そんなベンジャミンを見ながら手を叩いて大喜びであった。
普通、魔法の属性は一つか二つしか持てない。
しかしベンジャミンは様々な魔法属性を簡単に使いこなしている。
本人は隠しているつもりはないらしいが、夕食の時に何気なくガルボルグ公爵に話すと、いつも険しい顔をして表情を変えないガルボルグ公爵が愕然として慌てて国王に報告に向かったくらいだ。
ほぼ全属性を使えると言っていたが、マティルダからすれば意味がわからないくらい凄いことだと思った。
「本当に全属性を使えるのですね……!」
『ほとんどは使えるけど、僕は光魔法だけは使えないんだ』
「……光魔法」
そう聞いて思い出すのは珍しい光属性を使えるヒロインのシエナの存在である。
しかしこんな時までシエナのことを考えたくはないと、別の話を振った。
「わたくしは一属性だけですから羨ましいですわ」
『マティルダは十分強い魔法を使うじゃないか。もしかしたら少しなら他の魔法も使えるかもしれないよ?』
「本当ですか!?是非、教えてくださいませ」
魔法が元々使えない世界にいたからか、ベンジャミンの話はどれも興味深いものばかりで、次々と質問を投げかけてしまう。
『少し休憩しようか』と目の前に光の文字が浮かんだ。
いつも侍女達に止められてしまうくらい魔法の話に熱中してしまうこともしばしばだ。
博識で様々な魔法を使うことができるベンジャミンと会って話すことが楽しいと感じていた。
それに唯一、本当の自分を曝け出せる場所である。
次第に今まで溜め込んでいた愚痴が溢れていくが、いつも通りベンジャミンは話を聞いてくれていた。
「お父様とお母様は、絶対に失敗を許さないので、いつも緊張してしまいますし大変でしたわ。最近は屋敷の人達と令嬢達とはいい関係を築けていると思うのですが、ライボルトお兄様とローリー殿下には嫌われたままで……このままわたくしは破滅の道を辿ることになったらどうしましょう」
『……破滅?マティルダはなにか悪いことをしたの?』
「特にはしていないですけれども……。どうしてこうも嫌われているのかが不思議なのです」
『そんな未熟な奴ら気にしなくていい。マティルダは頑張っているから』
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