第084話・結界同盟
明日からの冒険者活動の目処も立ったので、僕はウェイターさんを呼んで料理の注文をしました。
で、運ばれてきたご飯をモグモグしながらイェルン姉さんやミーシャさんのグラスに何度も何度もワインを注いでいた結果。
「ミーひゃ〜! アンタなんで
今日も出来上がってしまいました。
ベロベロのイェルン姉さんです。
まぁ、出来上がったというか、作り上げたというか、というところですが。
「べ〜〜、だ! 姉ひゃんが悪いのよ! あたひのことよりそのへんのひょーもない男のことばっかり言うようになって! あたひが遊んでって言っても無視ひたりするから!」
なるほど。
つまりミーシャさんは、イェルン姉さんの興味関心が自分に向かなくなったことが寂しくて、イェルン姉さんにキツく当たるようになったわけですね。
「だかりゃって、わらひの狙ってる男を毎回奪ってくことはないでひょう!? あんたに取られるたびに悔ひくて頭爆発しちょうだったんだけど!?」
「ちょっとあたひに言い寄られただけでこっちに転ぶような男、姉ひゃんに渡せるわけないじゃん!!」
「しょんなのあんたが決めないでよ!」
「姉しゃんに任せてうまくいくはずないでしょ!」
「なんだと!」
「なによ!」
食後のアイスを食べているメラミちゃんは、お互いのほっぺをつねり合い始めたお二人の様子に、ただただ困惑しているようです。
「ミーシャって、ギルドにいるときは澄ました顔で男たちの相手してるけど、ほんとはこんな奴だったんだな」
はい。麗しき姉妹愛ですね。
「どうでもいいけど、ここまで酔わせたんだからちゃんとお前が家まで送ってやれよ」
はい、そうします。
「お前が、酔い潰れた女に悪さする奴じゃないとは、信じてるからな」
もちろんです。同意もなしに何かするのはイケナイことですから。
そんなわけで、仲良くテーブルに突っ伏した姉妹を結界板で担ぎ、お店を出ることに。
なお、ミーシャさんの暮らしている家が分からなかったので、お二人まとめてイェルン姉さんのお家に運び、二人とも服を脱がせてイェルン姉さんのベッドに寝かせ、回復結界を張っておきました。
僕も結界ベッドを作って横になり、眠りにつきます。
すやぁ。
翌朝。
「な、な、な、なんで姉さんが私のベッドに!? しかもなんでお互い裸なの!!?」
というミーシャさんの絶叫で僕は目が覚めたのでした。
◇◇◇
「……はい、ナナシ様。このカードがナナシ様の
ミーシャさんとともに冒険者ギルドに赴くと、冒険者ギルド受付嬢の制服に着替えたミーシャさんから運転免許証サイズのカードを渡されました。
カードの色は薄紫で、右上隅にはヒモを通せる穴が空いています。
カードの表面には文字記号の羅列と二次元コードみたいな模様が書かれていて、裏面には「ナナシ・十三歳・Gランク(0pt)・結界術士」と書かれています。
「おおー、これが冒険者証ですか」
「冒険者ギルドの支部が置かれている町なら、それが身分証の代わりとして使えます。町の出入りの際には必ず提示を求められますので、持ち歩くようにしてください」
僕は冒険者証に結界紐を結びつけると、結界財布と結束し、冒険者証をお財布の中に入れました。
これで失くすことはないでしょう。
「メラミ様がお見えになったらパーティー登録をしますので、その際はカードをもう一度お出しください。また、依頼の受注や達成報告、報酬の支払いなどで都度提示が必要となりますので、ご了承ください」
と言われたので他の人の様子を見ていると、受付に来た冒険者の人は受付台の上に置かれたガラス板みたいな物にカードの表面をかざして読み取らせているようでした。
電子決済とかカードキーみたいな感じで使えるようですね。
意外とハイテクなシステムです。
「受けた依頼を達成するごとに
じゃあ、ポイントの高い依頼と指定条件の依頼を優先して達成していけばいいわけですね。
「ところがですね。受けられる依頼にも難易度に応じたランク設定があります。原則として、受けられる依頼は自身の冒険者ランクの上はワンランクから下はツーランクまでです」
おや。だとすると、最初のうちは難易度の低い依頼から受けなくてはなりませんか?
うーん。規則だというなら従いますが、なんとも面倒ですねぇ……。
「はい。そこで、ナナシ様に必要なのがパーティー登録です。パーティを組めば、パーティーメンバー全体の冒険者ランクの平均が、パーティーでの冒険者ランクとして扱われます。つまり、ランクの高い方とパーティーを組めば、通常より高いランクの依頼を受けることができるのです」
なるほどなるほど。
それはつまり、メラミちゃんとパーティーを組むというのは、僕にとって必須事項だということですね。
「はい。メラミ様とのパーティー登録によりパーティー単位の冒険者ランクはD相当になり、Cランクまでの依頼を受けることができます。……正直言って、ナナシ様の実力は昨日の一件でよく分かりましたので、そもそもスタートのランクを特例措置でDからにしても良いと思うのですが……」
はて、なにか特例措置を使えない事情があるのですか?
「その……、当ギルドの副支部長が、そういう特例許可を出すのを非常に嫌う方でして……」
ふむ、そうですか。
じゃあ、仕方ないですね。
非常に申し訳なさそうにしているミーシャさんに査定効率の良さそうな依頼を教えてもらっていると、昨日と同じ格好のメラミちゃんがギルドに姿を見せました。
「よぉ。今日からよろしく」
はい。よろしくお願いします。
僕はペコリと頭を下げて、メラミちゃんと握手をします。
まぶしく輝くふとももとお膝を失礼にならない程度のつもりで見ていると「お前、女見てる時いつも目線が低いよな」と言われてしまいました。
ごめんなさい。
だってとっても美味しそうなんですもの。
特にメラミちゃんのふとももは、この帝国で会った女の子のお足の中でもトップクラスに素敵です。
お嬢様のお足にも負けていません。
やっぱり小麦色の肌って良いんですよね。
どことなく女神様の褐色のお肌に似ていて、それがまた素晴らしいというか。
さてさて。
そんなこんなと話をしながらミーシャさんにパーティー登録手続きをしてもらい、いくつかの依頼をまとめて受注しておきます。
「ちなみにパーティー名はどうされますか?」
「なんか良い案あるか?」
「じゃあ『結界同盟』で」
というわけで、僕の冒険者ランクを上げる日々が始まりました。
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