第10話GW1日目2

「では、事前に伝えていた通り男女別に別れて作業してちょうだい。私は別の仕事に取り掛かるからそのつもりで。男子も女子も先に終わったなら互いのフォローをしてください」

「「「はーい!」」」

「「「了解です」」」

互いに返事をして作業に取り掛かる。手順としては紙をダンボールから出して机に出して、2人で紙をまとめ、1人がホチキスを止める役になった。

「君は...仕事初めてだろうからホチキス係になってね...」

「お気遣い無く!俺も紙できますよ!」

「どうみても...手先が不器用...絶対ダメ...」

「おいおい!そんな事言うなよアッキー!実は器用かもしんねーだろー?」

「もう少しボリューム下げて。夏目はうるさい」

「うるさいとはなんだ!これが俺の正常の声だ!」

早速言い合いになってしまった...大丈夫だろうか...

「いえ、それに関しては事実です」

「マジ?」

「マジです」

「ならホチキス係だな!」

さっき擁護してたのに...この人は結構ズカズカ行くかもしれない。

「じゃ、よろしく頼むぜ〜!」


一方女子チーム。

「キャー!吉沢さんちっさくて可愛い〜!!ねぇねぇ!ヨッシーって呼んでいい?」

「!新しい...あだ名!!!!おう!ヨッシーでいいぜ!もうすみっこちゃんなんて呼ばせねーぞー!」

「キャー!言葉遣いもかーわーいーいー!!」

「そうか?...そうか〜?w」

「とっても可愛いわ!!」

「春姫、こっちも仕事に入りましょう?」

「ごめんごめん」

「吉沢さん。改めて今日はよろしくね」

「え〜っと...」

「北原です。何と呼んでくれても構いませんよ」

「そう?...じゃあ北ちゃん!!」

「!で、では私も...ヨッシーって...呼んでいいかしら?」

「いいぜー!」

「〜!可愛い!!!」

「ふゆみーは可愛いのに目が無いもんねー(ニヤニヤ)」

「そ、そんな事...無いです...」


どうやら向こうも楽しそうにしていますね。一時はどうなる事かと思いました。吉沢さんが年上に気圧されるのはでは。言葉遣いで怒られるのではないか。などと思っていたが杞憂に終わった。

「心配そうね?貴方はあの子の親にでもなったつもり?」

そう話しかけて来たのはパソコン作業をしていた真城先輩だった。

「心配にもなります。過去の話を聞いて、今は友達にまでなったんです。向かいの家にいるからとかそういうのではなく。雛鳥を見てる感覚に近いですね」

「そう...貴方もそんな事を思うようになったのね。それと、いつまで口喧嘩してるの貴方達!鬼島君を除け者にして作業もしないなんて私の顔に泥を塗るつもりかしら?」

2人ともその言葉を聞いてビクッとしている。確かに俺も今無意識にズボンを確認した。

「「すみません会長!」」

「分かればいいのよ。今すぐ作業に戻りなさいな」

そう言われ直ぐに席に着いて作業を開始する2人。

「貴方も、あの二人をよく見て学び、作業をこなしなさい」

「はい!」


作業を進めて分かったことがある。この人達、阿吽の呼吸すぎる。

「それとって。それとそれ。」

「これな。はいこれ。これ終わったらこっちも」

さっきまで声が大きかった夏目さんも、少しイラついていた秋風さんも言葉一つで相手のしたい行動を予測して動いている。

「なんというか...凄いですね」

「「?」」

2人して首を傾げている。

「あぁ!もしかして作業の話か?なんせ俺らちっせー頃から一緒にいるから。大体の事は分かるよね〜」

「いい時もあれば...悪い時もある...」

「そういうものですか...」

2人の作業スピードが早くてホチキスで止める手が止まらない。みるみるうちに終わってしまい、男子約100名の冊子を30分程で終わってしまった。今は彼らは談笑に花を咲かせている。

「目の前で彼らの行動を目にした感想を聞いてもいいかしら?」

誇らしげな顔でまた真城先輩が話しかけてくる。

「言葉では表せない...ですね」

「そうでしょう?春姫と冬美に彼らを推薦されて資料に目を通したけど特筆すべき点は無かった。でも実際に見て驚いたわ。正確に、精密に。私も最近目の当たりにしたのだけれど凄いものよ2人で1人って感じがしていて。羨ましくもあるわ。私は普段1人で何でもしてしまうから。こんな芸当、彼らにしか出来ないわ」

「ははーん?さてはお前、俺が雑務担当って言ったから手先不器用って思ったろ!」

「!」

「図星...まぁ、顔見れば今のは誰でもわかる...」

「舐められてる所申し訳ないけど、俺は多彩なんだ!!どうだすげーだろー!!」

「今の作業を目の当たりにすると納得がいきますね。息のあった作業、流石です」

「見どころがあるね〜!わっはっは!」

「ではそろそろ女性陣を手伝いに行きましょう」

「おうとも!」


「これは...何といいますか...」

そこには彼女らにとっては天国かもしれないが仕事を終えた俺らからは地獄の様な光景だった。

「やーん!手が小さくて可愛い〜!ホチキス止められて偉いね〜」

「飴舐めますか!?飴舐めますよね!?飴あげるから舐めてー!!」

「そんな褒めんなよ〜!照れる...」

「「キャー!!!!」」

「「「......................」」」

頑張って吉沢さんがホチキスを止める姿が彼女の好みどストライクだったらしく、1枚1枚丁寧に渡しそれをマジマジと見て反応を見てる。ゆえに...仕事が全然進んでいない!!

「おいおいおい!!なんで進んでねーのよ!おかしいだろ!」

夏目さんが男子側の代弁をしてくれた。

「だって〜この子が可愛すぎるからついね〜...それにあの、北ちゃんまで籠絡されてるのさ!」

「「!?」」

「あの北ねぇが、だと!?...一体何したんだ!!」

「あ〜?何もしてねーよ!ホチキス止めてるだけだ!」

「嘘つけ!それじゃ、北ねぇが落ちた説明になんねーだろ!」

「まるで私が攻略された風に言いますね」

「「「いや、されてんじゃん!」」」

3人の声が重なる。これがいわゆる総ツッコミ...!

「...違います...落ちてません...さ!仕事再開しますよ!男性陣は終わった様ですね。手伝いお願いします」

「それが人に頼む態度?」

中々に棘のある言い方をする秋風さん。大丈夫だろうか...

「心配ないわ。貴方の思っている事は杞憂に終わるわ。昔は喧嘩していたけれど今はする方が珍しいもの。あんなの弄りあってるに違いないわ。おかしいったらないわアハハ」

珍しく目に涙を浮かべて笑う真城先輩。こういった笑いが好きなのだろうか?

「やってくださいお願いします秋様ー(棒)」

「しょうがないですね。さ、やりますよ夏」

「しゃーなしだ!やるぞ秋!」

「じゃ、あたしは会長と話してくるね〜」

「「逃げんなー!!」」

今度は春姫さんにツッコミを入れる。息ピッタリの問答は漫才を見ている気分だ。

「いやいや、ホントに会長に用があんの〜」

「?私に何か用ですか?」

「心当たり無いんですか?」

「無くて当たり前です〜!だってさっき「あ、喋りたい!」って思ったから...テヘ!」

「じゃあ何を話したいの?」

それを言い終わると春姫さんが耳元に口を寄せて、

「会長〜、彼にベタ惚れですが何処を好きになったんです〜?」

「!?!?!?きゅきゅきゅ、急に何!?」

「いや〜、会長と恋バナなんてした事無かったんでこれを気に聞きたいなーって...で、どうなんです??」

突然コソコソ話し出したと思ったら会長が顔を真っ赤にしてこっちを見ている...一体何を話しているのだろうか...

「それはまた今度!!今は彼がいるからダメよ!」

「言質取りましたよ!そ・れ・に"彼"ねぇ〜。いつから彼にしたんです〜?皆に言う時はツンケンしてて鬼島君と呼ぶのも躊躇してたのに...もう付き合ってたりします〜?」

「つつつつつつつつつ付き合う!?!?」

今度は机を叩きながら起立した...ホントに何の話をしているのだろうか...

「〜!この話もまた今度!!」

「はーい(ニヨニヨ)」

どうやら話が終わったらしい。何一つ分からないまま話が終わった。


「「「「「「終わった〜」」」」」」

「皆ご苦労さま。あっという間の3時間ね」

あの後俺達は吉沢さんに対して暴走する女子をなだめつつ冊子作りを再開。夏目さんと秋風さんのコンビで効率は飛躍的に上昇。こちらは女子の相手もしなくてはならなかったので、1時間程かかってしまった。まだ折り返し地点だったので、他にも前倒しでできる仕事をやり、気づけば3時間経っていた。

「こんなに仕事が片付いたのなら、しばらく生徒会活動をサボってもいいわね!」

「それはどうなんです?先輩...」

「冗談に決まっているでしょう?猿のような思考でそんな事も分からないなんて...まだまだね!」

「でも、ありがとうございました、先輩」

「私の部でもあるもの。こんなの当たり前よ。それに、後輩が困っていたら助けるのは当たり前よ」

何はともあれ、無事に1日目のノルマを達成したのだった。

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