第26話

 魔力量測定と属性鑑定は更に別の棟であるということで、二人で道に迷わないように目的地へと行く。


 『魔力量測定』と書かれた看板と、『属性鑑定』と書かれた看板があり、どちらを先にするかは任意だそうだ。


 しかし、どうやら皆『属性鑑定』を受けたいらしく、そちらへと集まっており、『魔力量測定』はそこまで人数がいなかった。

ということで、ハクと二人でそっちへと並んだ。


 平均的な魔力の量については調べており、俺はそれを十分に上回っているので、この試験の心配をする必要は無いだろう。

 問題となるのは、ハクの方だ。

 俺との訓練で一緒に魔法の練習もしているが、ハクの伸び代は物理系の方が高い。

魔力が1増える間に、筋力が5くらいは増えている。


「アレクサンダー、魔力19!」

「「「おおおお!!」」」


 ん?

え、ん?

 声の方を見ると、煌びやかなマントを羽織ったどことなく背伸びしている様な少年が、19という魔力を出してドヤ顔をしている。

 そして、それを認める様に周りの人間は歓声や拍手を送っている。


 な、え?平均的な魔力は100~150のはずでは?

だって、剣士の姉、イキシアも、魔力の方は88と、少ない方で......


 何かを忘れている。

何を忘れているんだ?


『限定称号【幼児】10歳まで全ステータス90%ダウン。』


 ヒントを出す様なパルエラの声に、はっと気付く。


 つまり、10歳を境に、全ステータスが10倍となる。

つまり、アレクサンダーという彼の魔力は10歳と同時に190。

 ということになれば、確かにすばらしい才能となるのだろう。


 しかし、イキシアのステータスは、いや、まさか、騙されていた?

つまり、つまり、つまり......


「謀ったなイキシアァアアアアアアアアア!!!!!!」


◇◆◇


「へくちっ!...う~、風邪かなぁ~?」

「団長!何を呑気な事を!今はドラゴンの討伐中ですぞ!」

「は~い!......ノア君頑張ってるかなぁ?」


◇◆◇


 怒りで目眩を起こしそうだったものの、どうにか持ちこたえた。

咄嗟に口元に『ボックス』をあてがい、声を吸収したのだが、やや疲労感と心臓の音が煩わしい。


 今度会ったらマジで覚えてろ。


「つぎ、受験番号109。ノア・オドトンか。」

「あ、はい。」

「では、こちらに手を」

 

 掌を上に向けて前に突き出す。

その手を教師であろう老人に掴まれ、『お手』の様な状態になる。


「『ステータス一部顕現』」


 ほぉ~、そんな魔法があるとは、後学の為に覚えておくのも有りだな。


「1364!......えっ?」

「......」


 怪訝な表情をした老人と目を合わせられない。

いや、正直こんな事になるとは思って無かった。

 マジで、「おお!この量はこの年にしては多い方だ。将来が楽しみじゃ」みたいな感じを想定してた。


「不正か?」「だが相手は学園長だぞ?」「はっ、馬鹿なことをした馬鹿が落ちるところを見られるとはな。」「もしかして年齢詐称?」「いや、それでも1000越えはやり過ぎだろ。」


 ざわざわとする周囲に、全く相反する様な声を上げる者がいた。


「次!次私!見ててよノァ!」

「お、おう。」


 周りなど全く気にしない様子のハクに助けられた形になった。

本当にありがとう。


「静粛に!!たった今の測定に間違いは無い!さて、次はお嬢さん、受験番号108、ハクビ・デイジーか。」

「ふふー!ノァに負けないんだー!!」


 この日の為に特訓でもしたのだろう。

普段なら魔力の話題をあまりしないハクが、ここまで自信満々なのも珍しい。


「79!」

「「「おお!」」」


 今度は周りの反応が良い。

なんだろう。学園長らしい老人が間違っていないと言ったのに、言外に不正と断ぜられた様な気分だ。


「むー!ノァより全然少ない!」

「い、いやいや、君の年なら79でも十分に凄いぞ。」

「ノァに勝てなきゃ意味無いんだー!」


 むくれるハクを連れて、次の試験場へと向かった。


◇◆◇


 さっきのアレクサンダー君も『属性鑑定』を後にしたらしく、特徴的な見た目だったので見つける事ができた。

 先程から参考にさせてもらっているアレクサンダー君を今回も参考にさせてもらおう。


「アレクサンダー、【火】【光】」

「「「おおお!!」」」


 こちらでもアレクサンダー君は人気だ。

しかし、二つも属性を持っているとはすごいな。

 俺は【無】属性一つだけだし、ハクは俺に合わせて属性魔法を使わないから、純粋に憧れる。


「次は、109のノア・オドトンくん、108のハクビ・デイジーさん、学園長から聞いているわ。」


 こちらの試験管は年若い女性だった。

もちろん、8歳の俺から見たら十分に年上で、同じ辺りで言えば、ギルマスだろうか。


「では、ノアくん......?反応が無い?」

「あ、俺は【無】属性魔法しか使えないので、大丈夫です。」

「「「「あははははは!!!」」」」


 俺の言葉を聞いた周囲の人間が一斉に笑い始めた。

うん、これは予想通り。転生前に創造神から聞いていたことだったので、こう言った扱いを受けるのも想定していた通りだ。


「やかましい!お黙りなさい!次!ハクビさん、【風】【火】【光】【闇】【天国】【魔剣】【模倣】?」

「「「「すげええ!!」」」」


合計で七つ、内三つの固有属性。

 周りの反応を見るまでも無く素晴らしい才能だろう。


「うるさい!おまえらなんて嫌いだ!ノァ行こ!」


 何故か激怒したハクに手を引かれる形で、俺は試験場から、そのまま学園からも出た。


もしかして、俺が馬鹿にされたことを怒ってくれたのだろうか。


 今日の内には結果が出ないため、俺達は予め取っておいた宿に泊まるために町の中に出て行った。

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