第43話 クロードは束縛男?


「……どうしても、駄目だ」



(……俺はどうして、可愛い可愛いエルシアの頼みを断らなきゃいけないんだ)



 悲しそうな目で、こちらを見てくるエルシアに心を抉られたクロードは思わずケインを見る。



 だが、ケインは首を横に振るだけだ。



 二人としては事情を説明して、エルシアに分かってもらいたい。



 だが、王妃が贈り物を見て倒れた事で、エルシアを娘のように可愛がり出した国王からNGが出ているのだ。



 せめて、調査結果が出るまでは知らせるな、と。



「……1日だけですのに。殿下って心が狭いんですわね」




 フイッ


 エルシアはいじけたように横を向く。


 恐らく、彼女を手元に置きたいが為の束縛だと思われているのだろう。



 四六時中、求婚している弊害が出た。




(違う! 違うんだ、エルシア。離宮はただでさえ警護も少ないから!!)




 彼女を案じていると、どう伝えれば良いのか。


 クロードは言葉に詰まるがーー。



 その言葉に、ケインが身を乗り出した。



「そうなんですよ、エルシア嬢。殿下は嫉妬に駆られた束縛男になっているんです。だから、離宮へは殿下も連れて行って下さい」



「おい?」



 躊躇なく側近に売られたクロードは、机の下でケインの足を思いっきり踏む。



 だが、至って涼しい顔のままなのだから、大したものだ。



「そう言えば、殿下も療養中の身でして。こうして執務時間は確保していますが、基本はベッドの身。寝室に閉じ込めてしまえば、いないも同然です」



 いい事を思い付いたとばかりに話出すケイン。



「……それなら、まぁ」



 心なしか、その提案にエルシアも惹かれているようなのも辛い。



(元々一人でゆっくりしたいのが目的だから、仕方ないのか?)



 そんなクロードの心中は葛藤するばかりだ。




「良かった、約束ですよ! では、そう致しましょう。早速、陛下にご報告して出立の準備をして参ります」



 ケインはいそいそと出て行く。


 確かにクロードが行くとなれば、仮にも王太子。


 警護の数もエルシア一人が行くよりは付けやすい。 

 それに、クロード自身が近くで彼女を守る事も出来るから安心だ。



ーーだが、この扱いは何なんだ。



「殿下、離宮の見どころを教えて下さいませ。わたくし、楽しみだわ」



 フッ。


 意地悪な気持ちになったクロードは、嬉しそうに、離宮に思いを馳せるエルシアにこう呟いた。



「ケインは忘れていたが、療養は昨日で終了しているんだ。一緒に離宮を見て周ろうな」



 途端にエルシアが残念そうな顔をしたのは、言うまでもないのだった。

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