キャラ変1

 ……。


 ……なんかお尻に当たってる。


 これって……。


 綾人は目覚めて、目を開いたら壁が見えた。


 今日はアレクの逞しい胸板じゃなかったと、なんだかちょっと寂しい……なんてのは気のせいで、そう! 息苦しくなくて良かったなと思っていたのだ。


 ……それに気がつくまでは。


 綾人のお尻に当たっているもの。


 ……うん。アレクも男だもんね。


 朝勃ちくらいするよね。


 そう。アレクの息子さんが、元気いっぱいな事を主張していた。


 それにしても大きそうだ。


 これを入れられる女の子は可哀相だな。


 それとも慣れれば気持ちいいのかな。


 まぁ、俺には関係ないけど。



 ――人は言う。それをフラグだと。



 珍しくアレクがすぐに起きず、綾人の体に巻きついた腕を苦労して引き剥がして起きる。


 まだ少し怠いが、昨日ほどではない。


 さすが魔法がある世界! なんだかよく分からないけどすごい。


 前世刺された事がないから分からないけど、回復が早い気がする。


 ただ、刺される体験なんてもうしたくない。


 やっぱり早く隠居してスローライフを送ろう!


 ……と、いっても今は安静にするしかないが。


 身支度を整えるとアレクがいつの間にか朝食を食堂から持ってきてくれたので、一緒に食べる。


 ――モグモグ。


 ――ニコニコ。


 ――モグモグ。


 ――ニコニコ。


 綾人の食事の様子をアレクがニコニコしながら見ている。


 ……アレクは口の端だけ上げて笑うようなキャラクターだった気がするけど、いつの間に全開の笑みを見せるようになったんだ?


 それに……


「飲み物はいかがですか? 主人?」

「おかわり致しますか? 主人?」

「果物もございますよ 主人?」

「こちら手が汚れますのでお使いください 主人」


 ……ニコニコするか、甲斐甲斐しく世話するか、なんだかアレクのキャラが壊れているが大丈夫だろうか?


 そして、イケメンの笑顔にプラスされたキラキラオーラが眩しすぎて、逆に辛い。


 しかも、イケメンキラキラオーラがより王子様っぽさを醸し出していて、現役王子を使用人のようにこき使っているのかと思うと落ち着かなくなる。


「あー。アレクそんなに構わなくても出来るから大丈夫だよ」


 綾人が声をかけた途端。


「ご迷惑でしたか? うるさかったでしょうか?」


 とショボーンと問いかけてくる。


「い、いや。煩くはないけど」


「久しぶりに喋れるようになって、つい嬉しくて喋りすぎてしまっていたようです。申し訳ございません。もう少し静かにしますね」


 寂しそうにアレクが言う。


 ……た、確かに、ずっと喋りたくても喋れなかったのが喋れるようになったら喋りたいかも!? 喋る相手なんて俺しか居ないし、喋りたいなら1人で喋ってて、とかもおかしい話だしね。


 ――綾人は微妙に論点がズラされている事に気がつかない。


「ごめん。そうだよね。今まで声が出なかったんだもんね。さっきのは取り消しで」

「主人! ありがとうございます。誠心誠意お世話させていただきますね!」

「うん? うん。よろしくね?」

「はい!」

「あとさ、2人の時は名前呼びで良いよ。アヤトって呼んで。敬語も外して良いよ」


 なんせ現役王子様だからね! 王子への失礼な振る舞いで今度は不敬罪で刺されるなんて事は嫌だからね。


「ありがとうございます。アヤト様。時と場合によって使い分けさせていただきますね」


 "様"呼び! でも主人って言わせてるよりはいいのか? まぁ、今は奴隷という立場でもあるし、しょうがないか。



 そして、綾人の目の包帯が取れるまでは、久しぶりにゆっくりしながら、残りの2ヶ月弱のダンジョンアタック計画や、必要物資を揃えていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る