夢と光る本
そんな夢で目を覚まし窓の方を見るが、まだ真っ暗で変な時間に起きちゃったな……なんて、思いながら机の方に目を向けると、この間預かった魔法の本が
光り輝いていた。私は、それに驚きながらも恐る恐るその本を手に取り
開くと、この間までには無かったページが現れていて、そこにはこう書かれていた。
「異世界を行き来する魔法……?」
それは、私がずっと求めていた魔法……でも、この間までこんな魔法なんて
載っていなかったのに……あの夢のせい……?
そんな事を考えながら、私はそのページを食い入るように読んだ。
この魔法は、一度行ったことのある場所ならどこへだって行けるらしい。
ただし、条件があり、誰かと一緒に行くこと。
それが、この本に書かれている注意事項だった。
「やり方は異世界に帰る方法と同じか……」
それなら、問題はない。
元々、その魔法を使おうと思っていたから。
あぁ、早くこの事をあかりに伝えなくては……
そう思うが、時間はまだ夜中だ。
今起こすのは流石に可哀想だと思って、明日の朝伝えることにした。
次の日、私はいつもより早く起きて学校へ向かった。
理由は、もちろんあかりと話すためだ。
教室に入ると、まだ誰もいなかったけれど、まぁ、待ってれば来るだろうと思い椅子に座って待つことにした。
すると、しばらくして扉が開いた音がしたので顔を上げると、そこには驚いた表情をしたあかりがいた。
私がいることに驚いているようだ。
「あかりおはよう~」
「おはよう……今日は凄い早いね?どうしたの?」
「ん~?あかりに少し用事があって」
「私に用事?」
そう言って、私はあかりの机まで行き、向かい合うようにして座った。
そして、私はあの魔法の本の話をした。
「…………それってほんと?」
「うん、私が嘘ついたこと無いでしょ?」
「それは……そうだけど……」
「やっぱり不気味?」
「うん、そんな夢見たあとにそんな事あったら……ね」
「私もそう思ったよ、でも試してみたいの」
「…………わかった、私も一緒に行くよ」
私が真剣な顔で言うと、あかりも覚悟を決めたのか、一緒に行くと言ってくれた。
そんな彼女の言葉を聞いて嬉しかったけれど、同時に申し訳なく感じた。
そんな私の気持ちを感じ取ったのか、あかりは私の手を握ってきた。
顔を上げると、彼女は優しく微笑んでいた。
大丈夫だよと言わんばかりに。
私は、その優しさに甘えてもいいんだと安心できて、笑みを浮かべてありがとうと言った。
「言ったでしょ?私は百が選んだ世界に付いていくって」
「うん…………ありがとう」
「ううん、そうだ!この事皆には?」
「まだ…………放課後にでも話そうかなって思ってはいたけど」
「分かった、じゃあそれまで黙ってるね」
「うん、ありがとう」
それから、わらわらと生徒が登校してきたので、私たちは席に戻った。
朝からこんな話してたから、なんだか疲れちゃったな……
そう思いながら授業を受けた。
そして、昼休みになり、私達は中庭へと向かった。
みんなに話がある、早くと言いたいのに、中々言い出すことができなくて…………いつの間にか時間はお昼になっていた。
そんなお昼の時間ももう終わりで、もうそろそろ行かないと、午後の授業が始まってしまうような時間になっていた。
そんな私を察してくれたのか、あかりが口を開いた。
「百どうしたの?」
そんな一言だったけれど、みんなの視線は私の方を向き、私はそのことに勇気づけられ、やっと言うことができた。
その瞬間、私は緊張が解けてしまって、涙が溢れてきた。
泣くつもりはなかったけれど、止めようとしても止まらない。
どうしていいかわからず、泣き続けていると、玲央様が近寄ってきて、ハンカチを渡してくれた。それを受け取って、それで涙を拭きながらも、私はなんとか言葉を紡いだ。
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