魔法の本
預かった本を大切に抱えながら家路につく。
この本が本当に何か役に立つのか、まだ分からないけれど今はただこの人の優しさを信じたいと思った。
「ねぇ、あかりこの後私の家に来れる?」
「うん、大丈夫だよー」
「良かった!この本あかりと読みたかったから」
あかりは、それなら早く行こう!と私の手を引っ張り
ながら走り出した。
*****
家に着くと私達は図書室へと向かった、ここなら
静かに本が読めるから。
図書室に入る前に、メイドさんにこの部屋に人を近づけないでとお願いを
したあと、図書室の扉を開けた。
近づけないでとお願いしていても、やっぱり少し不安だった私は
図書室の鍵を閉めておく事にした。
これで、誰も入ってこられない。
「さて……これで大丈夫かな」
「ねぇ、百。この本かなり昔に書かれたみたいで文字が………」
「ほんとだ、これは解読しないと読めなそう……ちょっと待ってて」
そう言って、私は本棚から辞書持って来てページを捲った。
簡単に解読されない為なのか、かなり複雑な言語で書かれて
いたその本は、私達二人でもなかなか進まず夜遅くまでかかってやっと半分ぐらいの所までは読むことが出来た。
「ふぅ……やっとここまで読めたけど……」
「流石に疲れたねぇ、続きは明日にしない?」
「賛成、私もそう言おうと思ってた所」
続きは明日にしよう、と二人で決めて部屋へと戻った。
次の日の朝、私達はまだみんなが起きてこないような時間から
図書室に籠り昨日の本の解読を再開した。
読むことに慣れたのか、昨日よりも速いペースで本を読むことが
出来た、しかしそれでもかなりの時間がかかり昼過ぎになってしまった。
ようやく、最後の部分を読み終えると私達は達成感に包まれていた。
「…………できた」
「やったね……!」
そこには、こう書かれていた。
【まず、手鏡を用意して手鏡に月を映す。
次に、その手鏡に向かって呪文を唱える。】
「こんなに頑張ったのにそれだけ……?」
「なんかあっさりしてるね………ん?」
この魔法を使うには二人分の魔力が必要、この魔法を応用すれば
異世界の行き来も可能になるかもしれない。
そんなメモが書いてあった。
「異世界の行き来……ねぇ?私とあかりでやれば可能だったりしないかな?」
「えっ!?うーん……でも、もしもの話でしょ?この人だって戻れてないんだし……難しいんじゃ」
「この人はもとの世界に帰った時一人だったけど……私達は」
「二人いるから可能だって……?難しいと思うけどな」
あかりは、呆れたような顔をして言った。
確かに、そうかもしれないけど……
まぁ、試してみるだけやってみてもいいのかもしれないけれど……
そんな事を考えながら私は、もう一度本を読んでみた。すると、 気になることが一つだけあった。
それは、魔法を使った後についての記述。
魔法を使ったものは、記憶を失う。
魔法を使った人とその人たちと関わった人の記憶全て……
つまり、私たちが魔法を使えば私たちのことを忘れてしまうということ。
その時私はどうするのだろうか…………
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