図書室の本と魔法と
「お父様、お母様、お兄様、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「百ちゃんおはよう、昨日はよく眠れた?」
「えっ、はい…いきなりどうしたのですか?」
「なんだか、昨日の百ちゃん元気がなさそうに見えたから…でも私の勘違いだったみたいね」
「お母様……」
心配してくれたお母様の言葉に胸がじんわりと暖かくなる。
お父様の方を見れば、お母さまの言葉に賛同するかのように首を縦に振っていて
あぁ、この二人にも随分と迷惑と心配をかけてしまったんだなと言う申し訳なさと同時にこんなに心配してもらえるなんて嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「いいえ、確かに昨日はちょっと考え事をしていたので…でも!お兄様にお話しして解決したので大丈夫です!」
「ふふ、百ちゃんたら、本当に由紀くんの事が大好きねぇ~」
「はいっ!大好きです!…はっ!」
しまった、つい勢い余ってお兄様が大好きだなんて言ってしまった。
お父様とお母様を見ればニコニコしながらこっちを見てるし……当の本人のお兄様は
今までに見たことがないような笑顔を浮かべてこっちを見つめていた
「ほら!朝食冷めちゃいますから早くいただきましょう!」
「うふふ…はいはい」
そんな感じで穏やかな朝の時間は過ぎていった…
っと、そうだお兄様に話すことがあるんだった、朝食が終わったら声を掛けてみよう。
******
「お兄様、ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
朝食が終わり部屋に帰るお兄様に声を掛けた、なんだか昨日と立場が逆転してるな、なんて思いながら
話をつづけた。
「えっと、ちょっと相談したいことがありまして…私の部屋に来ていただけますか…?」
「うん、大丈夫だよ、いつ行けばいいかな?」
「では、夜でも大丈夫ですか?」
「分かった、夜に百の部屋に行けばいいんだね」
「よろしくお願いします、では」
「うん、また後でね」
これでよし、夜になったらお兄様に相談できるし…
ちょっと自分でも調べてみようかな、そういう事が分かりそうなのは…やっぱり図書室とか?
夜までは時間があるし、行ってみよう。
******
「ここが図書室……」
目の前には重厚な扉があっていかにもそれらしい雰囲気が漂っている。
よし、と意気込んで中に入ってみればそこは本棚が沢山あって本が沢山並んでいて まるで本の国に来たかのような錯覚に陥る。
さてと、まずは何を調べようか……
やっぱり歴史?それとも魔法?
「う~ん…これだけ本あると何から読めばいいか分からないな……」
何を読もうか迷った私は、とりあえず目に入った本を手に取りパラパラとページをめくる。
その本はどうやら魔法を扱った本らしく、私はその本を食い入るように読み始めた。
「ゲームをちゃんとやってた訳じゃないから詳しくなかったけど…魔法にもいろいろ種類があるんだ…」
その本は魔法の使い方や種類について詳しく書いてある本だった、文章の感じから魔法入門書みたいな本だろう。
なるほど、魔法ってこういう風に使えばいいんだ……
そこでふと、一つの疑問が浮かぶ。
「私ってどんな魔法が使えるんだろ?」
確かヒロインは、治癒魔法とか水魔法とか使えたはずだけど…悪役令嬢の私は?
自分の事なのに何も分からないこの状況がすごく気持ち悪い…
もし、人を傷つけたり悲しませるような魔法だったら…?ヒロインみたいな魔法は使えなくても
人の役に立てるような魔法が使えたらいいな……
「あっ、これなんてどうかな……」
そう言って手に取ったのは『植物図鑑』と書かれた本。
そこには、薬草やポーションの材料になる植物まで網羅されていた。
何故か私はその本の内容に惹かれ、その本を夢中で読み進めた。
あれからどのくらい時間が経っただろうか、窓から外を見ればもう夕暮れ時になっていて 随分長いことここに居たんだなって思った。
でもおかげでいろんなことが知れた気がする。
例えば、この世界にある植物は私が元の世界にあったものと同じ名前のものもあるということ。
それにしても、私に植物の知識があったのは意外だった。
そういえば、あかりが花が好きでよく植物園にデートに出かけていたしその影響とか?
あと植物図鑑の他に気になった本と言えば……治癒魔法が載っているこの本…
この魔法を覚えられれば私もこの魔法を使えたりとか…
「しないだろうなぁ…でも、何か役に立つかもだし覚えておいて無駄はないかも」
「百?」
「ひゃぁっ!?」
突然後ろから声をかけられて変な声が出てしまった。
「あはは、ごめん、驚かせちゃったね」
「お、お兄様!びっくりしました……どうしてこんなところに?」
「それは僕のセリフでもあるんだけど……僕はちょっと調べものをしにね、百こそなんでこんなところにいるの?」
「えっと、実は私も調べ物をしていて……それで今ちょうど終わったんです」
「へぇ、そうなんだ、ちなみになんて調べていたの?」
「えっと……」
「魔法…か」
お兄様は私の手の中にある本を見て納得したように呟いた。
「僕が言うのはお門違いかもしれないけれど、あまり無理はしない方がいいよ」
「……?どういう意味ですか……?」
「そのままの意味だよ、そうだ俺に用があったんだよね?今じゃダメかな?」
「いいえ!あの…おかしな事を言ってると思ったら笑ってくださいね?」
そう忠告してから私は夢の事、そして私の魔法の事を話し始めた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます