第8話 カムヒア! ロボットオタク

「あれは?」


「巨人よ」


 フェーも同じ光景を眺めながら、苦々しく答えた。


「あれが、ここでいうところの巨人か。中で誰かが、ロボットを操縦してるのかな?」


 オレが聞くと、ツィーが首を傾げる。


「何それ?」


「違うの?」


 首を傾げるオレに、フェーも首を傾げながらロボットを指差す。


「ロボットが、何か知らないけど。とにかく、あれが巨人なのよ」


「はぁ? 意味が分からない」


 巨大ロボットだったら、中に人が入って操縦するんじゃないのか?

 いや、待てよ?

 あれが巨人ってことは、もしかすると……。


「ロボットなのか?」


 フェーが言った通りだと、巨人=ロボットということになる。

 中の人などいない、オートメーションシステムの巨大ロボット。


「スゲェ……」


 興奮で血が沸き立ち、感激のあまり全身に鳥肌が立つのを感じた。

 この光景を、少しでも目に焼き付けておきたい。

 ああ、カメラがあったら良かったのに。

 ぜいたくを言うなら、録画して永久保存版にしたいくらいだ。

 さらにそれをコピーして、観賞用と保存用と布教用に分けるんだ。

 展示用は作っても意味がなさそうだから、いらないけど。


 そんなオレを尻目に、ツィーは興味なさそうにぼやく。


「まぁ、同族同士の戦争だから、わたし達には関係ないんだけどね」


「止めなくていいの?」


 口ではそう言いつつも、目の前に広がる光景から、目を離すことが出来ない。

 フェーは不思議そうな口調で、逆に質問してくる。


「止める? 何で?」


「いや、何となく。止めなきゃいけないかなって」


「巻きぞえさえ食わなけりゃ、いくらやってくれても構わないわ。それに、見つかると何かと面倒なのよ」


「捕まっちゃうの?」


「う~ん、捕まるっていうか、何ていうか……」


 フェーは、あいまいに言葉をにごした。

 すると、親切なデューが説明してくれる。


「巨人から見たら、わたくし達って生きているお人形みたいなものでしょう」


「は? ああ、まぁ、巨大ロボットから見たらそうだろうね」


「ですから、可愛がられてしまうんです」


「可愛がられる?」


 ロボット大戦から目を離して、フェー達を見ると苦笑している。

 思い出し笑いをしながら、フェーが口を開く。


「前に一度、見つかったことがあるんだけどね。あのデカい図体で『カワイイでちゅね~』なんて言うのよ」


「うわー。それは何というか……」


 ドン引きしながら、再び目線を巨大ロボットに向ける。


「あの『○ビルスーツ』みたいのが、赤ちゃん言葉を喋るのか。うーん、想像出来ないなぁ」


 その時突然、フェーとオレが乗ってきたカラスが、大きく響く声で鳴き始める。


「カーァッ! カーァッ! カーァッ!」


 途端に、巨大ロボット達の動きがぴたりと止まる。

 あれだけデカイ音を立てて戦っていたのに、カラスの声が聞こえたのか? 


 巨大ロボット達は戦いを止め、辺りを見渡し始める。

 ざわめく巨大ロボット達に、まるで「こっちこっち」と、呼び掛けるかのように、カラスは再び鳴き始める。


「カーァッ! カーァッ!」


「バカバカバカッ!」


 フェーが慌てて、カラスのくちばしを押さえたが、時すでに遅し。

 巨大ロボット達が、一斉にこちらを向いた。

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