ロボットオタクが異世界転移したら、いらんことしぃのトラブルメーカーにしかなれなかったから、早く元の世界へ帰りたい。
橋元 宏平
第1話 ロボットオタクとぶ
授業中、突然、空が真っ黒な雲に覆われたかと思うと、激しく光った。
同時に、爆音のような恐ろしい落雷の音が
雷が直撃すると、こんな感じなのかもしれない。
強い光を浴びて、目の前が真っ白になったかと思うと、意識が飛んでいた。
「――っ痛……」
気が付くと、ベッドのような物の上で、横たわっていた。
目を開けようとすると、目の奥が痛くて、気持ちが悪い。
体がだるく、頭痛もする。
横たわるオレの側に誰かがいて、心配そうな声を掛けてくる。
声から察するに、女子だ。
「気分は、どう?」
「最悪。目と頭が痛くて、気持ち悪い……」
思った通りに答えると、側にいた女子がオレの額を優しく撫でた。
かと思うと、指で
「痛いっ! 何するんだよっ!」
涙を流しながら起き上がって怒鳴ると、きょとんとした女子がいる。
「あれ? そんなに痛かった?」
「痛かったよっ!」
「でも、見えるようになったでしょ?」
「え? あ、ホントだ」
言われてみれば、確かにそうだ。
さっきの
良かった、失明の心配はなさそうだ。
何度も瞬きをした後、室内を見渡す。
教室でもなければ、保健室でもない。
病院でもなさそうだ。
ベッドがあるところをみると、寝室みたいだけど。
部屋は木造で、木の匂いがする。
同じく、木製のタンスと、オレが寝ていたベッド以外に家具はない。
シンプルな部屋だ。
オレを見下ろしていたのは、同い年くらいで長い髪の女子だった。
目が大きくて、アイドルになれるんじゃないかってくらい可愛い。
オレの学校に、こんな美少女いたっけ?
「誰?」
「あたしは、フェー」
「へー?」
聞き返すと、女子は唇を尖らせた後、もう一度繰り返す。
「フェー」
「へー?」
女子はますます機嫌悪そうに、今度は言い聞かせるような口調で言う。
「『ふ』よ、『ふ』『ふ』に小さい『え』で、『フェー』」
「『フェー』?」
「そう、『フェー』」
今度こそ、正しく発音出来たらしい。
フェーは、満足そうに微笑んだ。
フェーって、ずいぶん変わった名前だな。
ニックネームか何かかな?
「で、フェーは、オレに何したんだ?」
「目薬をさしたのよ」
フェーは、手にした細い棒を見せる。
理科の実験に使う、スポイトみたいな物かな?
と、思ったと同時に、フェーの体が見えた。
驚きのあまり、声を張り上げる。
「な? なななななんで、裸なんだよっ?」
「え? 裸じゃないじゃない、ちゃんと着てるわよ」
フェーは唇を尖らせて、両手を両腰にやった。
確かに、裸ではない。
ふわりとした、半透明のベールみたいなワンピースを着ている。
長袖で、丈の長さはひざが隠れるぐらいだ。
しかし中には、ブラジャーどころかパンツも
フェーはブラジャーを着ける必要がないくらい、ぺったんこだけどさ。
パンツくらいは、
もし、巨乳だったら、オレが大変だった。
何がって、そりゃあ、まぁ、アレだ。
賢明な読者なら、分かってくれるだろう?
詳しくは、聞かないでくれ。
「いや、だって、見えてるよっ! 色々と、ほらっ、その、見えちゃいけないものがっ!」
慌てて、目をそらす。
でも、どうしても気になって、チラ見してしまう。
男って、悲しい生き物だよな。
しかし、何でもないような口調でフェーは答える。
「あら。これが普通じゃない」
「普通じゃないよっ! 真っ裸より、中途半端に見える方がエロいよっ!」
オレがどぎまぎしていると、フェーは「ふんっ」と、鼻で笑って胸を張る。
「何言ってるのっ。ほら見なさい! あたしの乳首は、天を射しているのよっ!」
「何の話だっ?」
「これは、選ばれた者にしか与えられない、特別なものなんだからっ。それを見せることが、おしゃれなんじゃないっ!」
「ワケ分かんないよっ!」
どうしようもなく恥ずかしくなって、視線を落とす。
股間が丸見えだったので、慌てて隠す。
「わーっ! なんでオレまで、同じかっこうさせられてるんだよっ?」
「だって、君が着ていた服は、もうないから」
「ないって、どういうこと?」
オレが問うと、フェーは苦笑いを浮かべる。
「女の子達が奪い合って、バラバラに引き千切っちゃったの」
「引き千切った? 女子が?」
オレが着ていたのは、学ランだぞ?
女子の力なんか引き千切れるようには、なっていないはずだけど。
それに奪い合ったって、なんで?
さっきから、分からないことだらけだ。
そこで、気付く。
「ってことは、オレ、気絶している間に、裸見られちゃったってことっ? うわーっ、最悪だーっ!」
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