第3話 世界規模の戦争

津村 淙庵。江戸時代の歌人である。彼が見聞したものを譚海といった。1795年に記したものである。

 その中では、長崎の遊女たちの姿が描かれていた。豪華さは吉原以上だったと言われているが、オランダ人は市中を動き回ることが出来なかった。男性にとっては、禁欲状態であるといっても過言ではない。当時の長崎奉行が、そんな状況を対策すべく、今でいうデリバリーという対策をとったのである。

 シーボルトも例外ではなかったのだろう。遊女を斡旋する業者にお願いしたようだ。それを通じて出会った女性は、楠本滝である。その二人の間で、子供が生まれ、娘のイネは、シーボルトが送るオランダの医学書を用いて、日本の産婦人科の発展に大きな影響を与える日本初の助産師となる。

 その中、シーボルトは忘れられなかったのだろう。石の詳細も、イネに渡る書物には記されていた。それには、こう記されていた。

「Sekitei Kiuchi breathed his last in 1808, so it is impossible to observe how a strange stone is. Moreover Tokugawa shogunate may never permit me to enter Japan. Hence I would like you to observe it. It has mighty power to be able to conquer the world. The world will occur on a global scale on account of attempting to rob it if so. You must conserve it lest a war on a global scale should happen. I hope fortune will smile on you.(木内石亭は文化5年(1808年)に亡くなっているので、石がいかに奇石であるかを観察することはできない。また、徳川幕府が私の入国を許可することもないだろう。だから、ぜひ見てほしいのです。それは世界を征服できるほどの強大な力を持っている。もしそうなら、それを奪おうとしたせいで、世界は世界的な規模で起こるだろう。世界規模の戦争が起きないように、保存しておく必要がある。幸運があなたに微笑むことを祈っています)。」

 彼女は、その書物を手にして、震えが止まらなかった。時は、1830年代後半のことである。

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