ainotameni

アカニシンノカイ

手紙

 息子よ。お前がこれを読むとき、俺はもうこの世にいないだろう。もし、俺が生きているうちにこれを手にしているなら、すぐに読むのをやめるのだ。

破り捨てろ。いや、焼き捨てろ。

もう一度、確認する。もう俺は生きていないな。ならば続きを読むがいい。

強制するつもりはない。嫌なら読まなければいい。ただし、読まないならば焼け。読んだ後でもすぐに焼け。











覚悟はできたようだな。では、本題に入ろう。



Qという男が死刑になったのを覚えているだろうか。そうだ、二十年にわたり、五十三人もの人を手にかけたという人物だ。

この男は無実だ。私は犯人を知っている。やったのは別の男だ。なぜ男だとわかるか。それは俺が真犯人だからだ。

なぜ五十人以上もの人々の命を奪ったのか。それは父さんの仕事に関係する。

知っての通り、父さんは人工知能の研究をしている。ある日、偶然から従来の能力を凌駕するAIの開発に成功した。

俺はそれをスグルと名づけた。そう、お前と同じ名前だ。

スグルのことは他の研究員には秘密にした。あまりにも能力が高かったからだ。スグルは人間を越えてしまった。

冗談で完全犯罪が可能かどうか問いかけたところ、スグルは「できる」と答えた。具体的なプランまで提示してみせた。俺は実験してみる誘惑に抗えなかった。

計画は完璧で、俺は捕まらなかった。完全犯罪を成立させるため、Qという男に罪を着せることにも成功した。この先、俺の罪が明るみになることはないはずだ。だから安心しなさい。

最後にどうか父さんを軽蔑しないでほしい。悪いのはAIなのだ。

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