第27話 「パーティーメンバー追加」

 ひとまずアリシアという最大の問題は片付いた。(片付いてない)

 でも牢屋の中に入れておいたんだからなにもできないだろう。ナナくらいの子供であれば鉄格子の隙間を抜けれそうだが、アリシアには絶対に無理だ。


 ……あ、いやアリシアが太ってるって言いたいわけじゃないよ。


「で、次の問題は……」


 今いるのは宿の一室。そこには俺とナナ、イオリ。そして、カナ、シャル、ソニアの六人。


 多いな!? しかも俺以外全員女の子。狙ったわけじゃないけど、ハルトみたいな女の子を侍らせてる感じがなんか嫌だな。

 女子が沢山なこと自体は嬉しんだけどね。


「どうしよっか」


 元ハルトのパーティーメンバーってことでか、三人とも大人しい。絶対気まずいだろうな。


「私たちの処遇はカイリ……違うな、カイリ様に決めて頂いた方針に従います。慰み者にしても、売り飛ばしても、文句は言わない。それだけのことを私たちはカイリにしたのだから」


 シャルはめっちゃ覚悟を決めていたようだった。


「慰み者とか、売り飛ばすとか、そんなことはしないよ。仮にも同じパーティーにいた仲間同士だしさ。だけど、一つ聞かせて欲しい。どうしてあんなにハルトに心酔してたんだ? 良い噂はないってことくらいは分かってたと思うんだけど」


「そう、だな……ハルトが私たちをパーティーに加えたのも、身体が目当てであるということも知っていた。幸い、直接手出しする度胸はなかったようだが」


 相手から誘ってくるのを待ってたのか、ハルト……。それで自ら身体を差し出さない辺りにささやかな抵抗を感じる。


「ならなおさら付いて行った理由が分かんねえな」


「私たちには、行く当てがなかったんだ。元々、私たち三人は奴隷だったからな」


「奴隷……?」


「ハルトに買われたんだ。奴隷として、貧しく苦しい生活を送っていた私たちにとっては、唯一の希望だった。だから、ハルトを否定すれば、その希望すら否定することになる」


 なるほど。つまり、自分たちはもう辛い生活から解放されたんだと思い込まなければならなかったんだ。

 辛い生活から逃げたはずなのに、逃げた先も辛いと思うようになってしまったら、終わりだから。


 だから本心で嫌だと思っていても、幸せだと思い込まなきゃいけない。自分の精神を守るために、ハルトを良い人であると錯覚しないと駄目だったんだ。


「……そんなに辛いんだったら、俺と一緒に抜け出してくれたら良かったのに」


「カイリ様に何度も冷たく当たって……それで自分たちが辛いから一緒に行きたいなんておこがましいことは言えなかった。私たちのせいで、カイリ様はもっと辛かったはずなのに」


「辛かったのは否定できねえけど、受け入れてたよ。……それと、その様付けはやめてくれ。俺より年上に様を付けられるのは、慣れてねえんだ」


 ナナはもう慣れた。けど、お姉さん的な感じのシャルに様付けされるとむず痒い。


「それに、これから一緒にパーティーを組む仲間なんだから、呼び捨てで良いよ。前みたいにさ」


「……私たちを、パーティーに」


「ちょっと冷たく当たられたくらいで見捨てねえ。それに、他に行く当てもないんだろ。だったら、一緒に頑張ってみようぜ。思い込むようなもんじゃない、本当の幸せを、一緒に掴むんだ」


 俺はシャルに手を差し出す。すると、シャルはまるで割れ物でも触るかのように俺の手を両手で大切そうに覆う。


「――カイリ」


「ああ、そうそう。前みたいにそうやって呼び捨てで……」


「私と――結婚してくれ!」


「――へ?」


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