第15話 「新情報」
注目され過ぎて移動するだけでも一苦労だけど、なんとか人ごみをかき分けて逃げることに成功した。
人通りの少ない細道に集まった俺たち四人は無事再開できたことを喜ぶ。
「カイリ様とてもかっこよかったです! わたし感動してしまいました!」
「やっぱりカイリはすごいよね。……ちょっと惚れ直しちゃったかも」
「流石はイオリちゃんが認めたアイドルだよ、カイリ! しかも、あいつらカイリを追放した不届きな連中なんだよね。スカッとしちゃった」
「そういえば、イオリにその話したんだっけ」
「それは普通にハルトって人自身が言ってたし、別に聞かなくても分かってるし」
「ん……? どういう意味だ?」
「一年前くらいからカイリの足跡が追えなかったのが悔しいけど、大体どこからでも情報は引っ張ってこれるよ」
なんかイオリが怖いこと言い始めた。
俺は話題を変えてみる。
「そ、そんなことより、街に戻ってきたんだし、ついでにやりたいことがあるんだけど」
「やりたいこと、ですか……? カイリ様が何をされるつもりでも、私はお手伝いしますよ!」
「あぁ、ありがとう。やりたいことなんだけど、ギルドで情報収集をな」
「なになに~? 情報集めならイオリちゃん大得意だよ~!」
なんかイオリの情報集めって怖いんだよな。理由は分からないけど。
「どんな手段使ってるのかは知らねえけど、今回はギルドで話聞くだけだからイオリだけに任せる気はねえよ」
「それで、何を聞くつもりなの?」
「王様が前とどう変わったのか、だ。ナナの言葉を疑うわけじゃないけど、本当に王様がおかしくなったのか裏付けを取らないと、正しいことやってるか不安になるからな」
王国と戦うことになっても別にいい。実際、既に兵士とか倒しちゃってるし。それを正当だと思える理由が欲しかったんだ。
「じゃあ、聞き込み開始だ!」
◇
「国の情勢で変わったことかぁ……さあな、オレはダンジョンにさえ潜れればそれでいい」
「そうか、ありがとなおっちゃん」
これで聞き込み五人目。ろくな情報が集まらない。ギルドには人が多いしいけるかと思ったけど、幸先良くない。
「はぁ……どうしたもんかな」
しばらく粘ってみて駄目だったから、俺達はギルドの外に出て一旦休憩していた。
「このままじゃらちがあきませんね……」
「ふっふっふ、こういう時こそイオリちゃんの出番だね!」
そういえば情報収集は得意とか言ってたな。
「なにをするつもりなんだ?」
「特別なことじゃないよ。ただ――配信をするだけだよ」
イオリがカメラを付けると、すぐさまチャット欄が動き始める。
「やっほー、みんな元気してる~? みんなの可愛いイオリちゃんだよ~!」
『イオリちゃん可愛い!』
『今日も推しが尊い……』
『怪我とかなくてよかったー』
『イオリちゃん好き好き』
『俺の画面に天使が映ってる……』
開始して十秒後には一万人が集まっている。
レベルが違いすぎんだろ。いや、イオリは確かに可愛いし、アイドルとして人気になるのも分かるけどさ。
「ちょーっと協力してほしいことがあるからさ、みんなギルド前に集まってくれるかな? 協力してくれたらぁ……良いこと、あるかもね♪」
それから五分と経たないうちに、とんでもない行列が出来上がっていた。
「す、すげえ……」
俺が日本で見た、アイドルの握手会みたいな規模の行列だ。
って、イオリもアイドルだし似たようなものか。
「はーいじゃあ順番に並んでね~。お話、しよっか♪」
それ以降は俺主導で話を聞くことになった。
「最近、この国で気になること……かぁ」
「あぁ、なんでもいいんだ。なかったらないであなたを責める気はない。ただ……良い情報をくれると、イオリとの握手権を差し上げよう」」
「なん……だと……」
俺と話している男の目つきが変わった。
「なにか……なにかないのか、オレ!?」
めっちゃ頭を抱えておる……握手権の誘惑すさまじいな。
「くそ、なにもでてこない……っ!」
「そうか、残念だ……次の方」
「ちくしょおおおおおおおお!」
相手のリアクションが面白いとちょっと合わせたくなるよね。男は悔しそうに肩を落として去っていく。次にやってきたのは女の子だった。
「どうしたのかな。迷子?」
「ううん、違うよ! わたしはね、お話ししに来たの!」
「お話?」
「お国のこと、お父さんから聞いてたことがあってね。なんかね~アウスト王国は、しんりゃく? するんじゃないかって」
「そっか~しんりゃく。『侵略』かぁ~………………って、えぇ!?」
聞き逃せない単語が聞こえたけど!? なにそれ!?
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