門番

 ああ、怠い。


 ずっと突っ立っているだけのせいで脚が浮腫む。

 護衛用の短機銃マシーネン・ピストーレも重くてしょうがない。


 まあ、最近のは軽量化されていて、以前の小銃ゲベーアに比べればまだ幾らかはマシだがな。


 まあ、こんな処に突っ立て、1日1回来るかどうかの汽車と、いもしない脱走者を見張っているだけでそこそこの生活ができるなら、この御時世、ありがたい事この上ない。

 この門を潜って戻ってきたやつはいねぇ。


 まあ、そのときどきやって来る汽車が、糞尿垂れ流しでとにかく臭いのは本当に勘弁してほしいがね。


 大体、あの貨車に乗せられてる連中の暗い顔を見ると、こっちも気が滅入るんだ。

 幾ら仕事っつったって、あれはシンドイ。


 ま、革命直後の世の中に比べりゃ、大分生活はマシだし、この程度の辛さでメシが喰えるならありがたいもんだ。


 生きてく為には、死んだようにしないとな。

 こんな単純な事も解らない、生活に困ったこともないスノッブぶったインテリ連中はダッハウ辺りでもうくたばってるかもな。

 はは、それが人生ってもんさ。


 ただ突っ立てるのもシンドイが、最近は汽車が多くきやがる。

 同じ給料なら、少ない方が楽だってのによぉ。


 で、来るたんびにあの臭いと辛気くさい顔だ。

 まったく、心を殺さないと、やってらんねーな。


 ああ……

 汽車がきやがった……

 はぁ、また、あの臭いと辛気くさい顔か……


 それも喰うためか。

 ダリぃな。

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