最終話 借金取り
「母さん、やっぱり俺がオヤジを殺したようなもんだよ。会社のために死ぬよりは会社を捨てて生きようって言ったら、こんなことになっちまった」
「そう思わないで。お前の考えは間違いじゃなかったよ。お前はちっとも悪くない。ただほんの少し思ってた通りに行かなかっただけでこうなったんだから」
パチンコ店から無言の帰宅をした丸山を見て、息子は大いに後悔する。
「会社を潰してもいいから生きる方を選ぼう」と言ったら、結局
父親の死に自分は大きくかかわっている。もしあの時説得しなかったら、もしかしたら生きれたのかもしれない。その思いがどうしても消えなかった。
彼が首を吊って自殺してから数日後、葬式が行われていた。彼の生前の関係者に連絡を送ったがその中では式に参加した者は誰一人いない。
代わりに葬式に参加したのは、消費者金融の借金取り立て班。着ていたスーツがはち切れそうな身体をした大男たちが怒鳴り声をあげた。
「旦那には178万の貸しがあるんだよ。払ってもらおうか!?」
「こっちは146万だ! 返してもらおうか!?」
「アンタラのオヤジさんが借りた117万円、きっちりと耳そろえて返してもらおうか!?」
「カネ返せ!」
大男たちが遺族に詰め寄る。
「ウチにはそんなカネなんて無いんだぞ! もう少し待ってくれないか!?」
「カネが無いだぁ!? この家を売ればそれなりのカネになるだろうが! 多少ローンが残っても返済できるじゃねえか! それとも身柄さらって身体を『切り売り』してもらおうか!?」
「娘さんをソープに沈めろ! もう18歳になってるんだろ!? 成人してれば問題ねぇ!」
「借りた金は利子付けて耳そろえて払うもんだろうが常識じゃねえか! カネ返せ!」
「ひ、ひいいいいい!!!!!」
結局遺族たちは家を売り払い、借金の返済に充てた。それでもまだ足りず、結局家族全員労働に出て返済することとなった。
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