第3話 男の子が怖かったの!

「俺は一度も絶対調教のスキルを使ったことはないよ」


「え? そうなの?」


 レオンの言葉に、エステルが意外そうに目を見開く。

 エステルの視線を受けて、寮長もうなずいた。


「レオン君は紳士的なんだよ~。ま、だからこそ落ちこぼれなんだけどね」


 絶対調教などというスキルを使うわけには、もちろんいかない。そんなことを許してくれる女性の相手なんていないし、レオン自身も女性を無理やり奴隷にするという自分のスキルは嫌いだった。


 だが、スキルを封じられた魔剣士は、評価されない。スキルを用いて、帝国を守る強い魔剣士になることこそが、学院では望まれるからだ。


 エステルは複雑そうな表情を浮かべたが、すぐに首を横に振った。


「だとしても、わたしはそんなスキルを認めないし……それに、わたしにしたハレンチなことを絶対に許すつもりはないわ。わたしにあんな、き、汚いものを押し付けて……」


 エステルは風呂場でレオンと密着したときのことを思い出したのか、顔を真っ赤にした。


「それは本当に悪かったよ。ごめん。ただ、あれは俺も慌てて必死で……許してくれないかな」


「嫌」


 エステルは取り付く島もなかった。


(まあ、俺のやったことを思えば、謝罪を受け入れてくれないのも当然か……)


 レオンが意図したものではないとはいえ、エステルとしてみれば、胸をまさぐられ、あそこを当てられ、口をふさがれて襲われる恐怖に怯えたわけなのだから。


 とはいえ、このままでは困る。エステルはびしっとレオンを指差す。


「たとえスキルを使うつもりはなくても、頭の中はエロいことで一杯だったんでしょ!?」


「そんなことないよ」


 レオンの言葉に、エステルはぶんぶんと首を横に振った。


「嘘! あんなにわたしの胸を揉んだくせに! 犯罪者! ……こいつを退学処分にしてください、寮長!」


「それはあたしの権限ではさすがに無理だよ~。それに、今回の件はエステルちゃんにも原因があるし」

 

「ですが……こんな人と一緒に、同じクラスで授業を受けるなんて……これからもずっとトラウマが呼び起こされそうで……」


 エステルはうつむく。怖い思いをさせたのは、本当に申し訳ないと思う。

 だが、レオンも退学になるわけにはいかない。たとえ落ちこぼれと言われても、レオンは目的があってこの学院に入学した。


 寮長はふむとつぶやくと、ぽんと手を打った。


「それならさ、いい方法があるよ。二人で魔剣士として決闘をすればいいんだよ」


「え?」


「負けたほうが勝った方の言うことを何でも聞くってわけ」


 この学院では実戦重視。その一環として、生徒同士の決闘が認められている。

 それを使って、決着をつけろということらしい。


 エステルは反対かと思いきや、乗り気だった。


「なら、そうしましょう。わたしが勝ったら、ランカスターくんは退学ってことね」


「いいけど、俺が勝ったら、エルミジットさんは俺の言うことを聞かないといけないけど……」


「あなたが勝てるわけないでしょう? わたしは入学してすぐに学院序列22位になったのよ。反対にあなたはまともなスキルも使えない落ちこぼれ。わたしが勝つに決まってる」


 エステルは不敵な笑みを浮かべた。こういう表情も可愛く見えるのは、美少女はずるいと思う。

 レオンはうなずいた。


「わかった。その条件でいいよ。エルミジットさんが勝ったら、俺は退学。俺が勝ったら、俺の命令を聞いてもらう」


「ええ。受けて立つわ」


 勝負は明日の正午からと決まった。エステルは上機嫌に部屋から出て行く。


 そして、残されたレオンは肩をすくめ、そして寮長を見る。


「とんでもない提案をしてくれましたね、寮長」


「あれ? レオン君は困らないでしょう? だって、レオン君はエステルちゃんに勝つつもりなんだから」


「まあ、そうですね。俺は彼女に負けませんよ」


 レオンはあっさりとそう言った。寮長はふふっと笑う。


「あたしとしてはレオン君にぜひスキルを使って、うちの寮の戦力になってほしいんだよね。寮対抗戦も近いしさ」


「それは勝ったら、俺がエルミジットさんに絶対調教を使え、ということですか?」


「エステルちゃんは、『負けたら何でも言うことを聞く』って約束しちゃったから。絶対調教の命令を受け入れないといけないよ」


「でも……」


「君の目的・・にも、一歩近づくでしょ?」


 レオンは天を仰いだ。寮長の言う通り、状況が許すならスキルは使ったほうが良い。レオンが強くなり、真の目的を果たすために、


 ただ、クラスメイトの女子を奴隷にする。それはとんでもないことに思えた。

 まさかエステルは自分がレオンの奴隷になり、惨めにレオンの慈悲を乞う存在になるとは思っていないだろう。


 だが――寮長の言う通り、落ちこぼれのレオンは、クラスの聖女・序列22位のエステルに勝つ自信があった。


「興奮しない? レオン君。あの高飛車で真面目な聖女様が、君の前にひざまずくんだから」


 寮長はいたずらっぽく笑った。そして、寮長の言葉は、レオンが勝利すれば現実のものになるのだった。








【後書き】


いよいよ決闘です!


面白い、続きが気になる、エステルが調教されて従順になることに期待!と思っていただけましたら


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