第90話 癖を歪ませない


 結局、俺は翌日レオンと一緒に調教場でトレーニングすることとなった。


 はい。

 調教場で、

 レオンと一緒に、

 トレーニングを。


 ……別に変な意味じゃないからな!


 ただ文字に起こすと、字面から危険な香りが漂うだけだ!


 ――だが幸か不幸か、翌日はクローディア&フレンとの合同トレーニングが予約済み。


 ロゼとソリンも顔を出すと言っていた。


 なのでレオンには「友人が一緒でよければ」という条件でOKした。


 ……ぶっちゃけ断ってもよかったんだけど、「どうか僕のモンスターを見てほしいんだ!」って凄いキラキラした目で言われちゃって……。


 ――それにレオンがこの世界の主人公なら、いずれは彼女たちとも出会うんだろうしさ。


 そのファーストコンタクトに立ち会えるのは悪くない。


 レオンとロゼたちが急接近する可能性は高いワケで――場合によっては、今後の身の振り方を弁える必要がある。


 もしレオンとヒロインたちが親密になるなら、俺は謹んで距離を置こう。


 なにせワイはモブなので、ええ。

 主人公には勝てません。


 ……最近、本当にただのモブなのか自分でもわからんくなってきたけど。


 主人公レオンとの親密度が上がっちゃうしさ。

 怖……。



 そんなこんなで――翌日。



「……今日はどんな一日になるんだろうな、スピカ……」


「きゅーん?」


 なんだか朝から疲れてる?

 と彼女は俺を心配してくれる。


 なんていい子……。

 その優しさが五臓六腑に染みわたる……。


 ――うむ、そうだな。

 スピカに情けないところは見せられん。


 親として、ワイはこの子の純情を守る義務があるんや!


 彼女のへきを歪ませないためにも、今日は一段と気も尻も引き締めていくでッ!!


 子供に不純なものを見せるのダメ、絶対!


 そう思いつつ調教場の中で待っていると、


「ノエルくーん! お待たせー!」


 遠くからレオンがやって来る。


 どうやらクローディアたちよりも早く到着したようだ。


「おはよう、ノエルくん! 今日はいい天気だね!」


「お、おはよう……確かにいい天気だな……アハハ……」


「昨日からずっとワクワクして、あんまり寝られなかったよ。だからその……夜の間に、色々と準備してきちゃった……♪」


 ――怖い。


 準備ってなに!?

 モンスターのトレーニングの準備ですよね!?


 主語を抜いて話すんじゃありません!!


 ……いや、アカン。

 頑張れ俺。


 こんな出会い頭から精神を乱されていては、とても一日持たんぞ……。


 スピカの純情は俺が守るんだ!

 漢を見せろノエル・リントヴルム!


 喝ッ!!!



 内心でそんな風に気合を入れ直していると――


「おーい、ノエルー!」


 やや遅れて、ロゼ、ソリン、クローディア&フレンの四人が到着した。



 いよいよ――主人公とヒロインたちのファーストコンタクトである。


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