第5章 モブだけど、遂に"彼"と出会ってしまったようです

第87話 どうしたらいいですか?


 ――『フォルシティ魔導学園』の中を、一台の馬車が通っていく。


 馬車は絢爛な学生寮に到着。


 すると一人の少年が、ドアを開けて馬車から降りた。


『お待ちしておりました! ――様ですね?』


 同時に、謎の魔法生物が出迎えてくれる。


 まん丸の身体にケモ耳。

 しかもふよふよと宙に浮く魔法生物。


 それを見た少年は、


「うん……今日からよろしくね」



  ▼



「むっふっふ~……ノエル・リントヴルムさん、でしたっけぇ~?」


「……はい、先生」


「それでそれで、この占術師エメ・アポリーヌになにを占ってほしいんですかぁ~?」


「実は俺、スピカっていう好きな子がいるんですけど……最近、他の子との好感度がどんどん上がっちゃって……」


「ほうほう~、恋のお悩みですねぇ~。私はそういうのも大得意ですよぉ~」


「俺はスピカと静かで穏やかに過ごしたいんです。どうしたらいいですか?」


「ではでは、占ってしんぜましょう~。……よぐ=そとーす、よぐ=そとーす、おんぐ~だくた~りんか~……」


「……ゴクリ」


 ――怪しげなフードを頭から被り、でっかい水晶に手をかざす占い師。


 すると、


「――むむむ!」


「先生、なにか出ましたか!」


「これは……”ライバル”とお告げが出ました!」


「ラ、ライバル……!?」


「おそらく、ノエルさんに恋のライバルが現れる……ということでしょうかぁ~。NTR展開ですねぇ~」


「そ、そんな……! スピカが誰かに奪われるってことですか……!?」


「う~ん、それはちょっと違うような気が~……。とりあえず言えるのは、”同性にご注意を”ってことくらいですねぇ~」


「……そうですか。ありがとうございました」


「どうぞ、またのお越しを~」


 ――占いの結果を聞いた俺は、市場バザールの片隅で怪しい占い屋を営む生徒の下を後にするのだった。



 ……ロゼ、ソリンに引き続き、クローディアの愛情ランクまで”1”になってしまった。


 クローディアって悪役令嬢だよ?

 いや”元”だけど。


 決してメインヒロインじゃないんだが?


 敵ヒロインも攻略できるとか神ゲーかよ……。

 傑作のダンプリがもっと傑作になっちゃうじゃんか……。


 って、違う違う。

 そうじゃ、そうじゃない。


 もう何度思ったかわからんが、モブの俺がヒロインの好感度上げてどうすんだって!


 主人公はどうしたんや!


 主・人・公・は!


 ヒーローは遅れてやって来るってか?

 遅れ過ぎだろ!


 モブとヒロインが仲良くなってから現れて横取りしてくとか、単なるNTRクソ野郎やんけ!


 いや別に、俺とロゼたちは恋仲でもなんでもないけどさぁ……。


 それにクローディアと俺の関係はあくまで師弟なワケだし……。


 ……あくまで師弟ですよね?

 師弟関係として愛情ランクが上がったんですよね?


 ――いや、ダメだ。

 もう考えるのはやめよう。


 心を無にするんや。

 煩悩退散。


 煩悩を振り払えば、火もまた――


「きゅーん」


「あ、スピカぁ♡」


 上空からスピカが下りてきて、俺の肩に止まってくれる。


 俺が占いをやっている間、彼女には空を散歩してもらっていたのだ。


「きゅきゅーん?」


「うんうん、占いは終わりましたよ~。スピカは今日もかわいいねぇ~」


 全力で彼女に頬擦りする俺氏。


 は? 煩悩退散?

 俺はスピカがいれば火だって涼しく感じるんだが?

 だからOK。


「さ、寮に帰ろうか。今日のごはんは――」


 そう言いながら市場バザールを歩いていると――俺は誰かと肩をぶつけてしまう。

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