第2話 この世界に転生したならば
――信じられない。
でも間違いなかった。
どうやら俺は転生してしまったらしい。
それもダンプリの世界に!
まるでラノベみたいなことが現実になりやがった!
ようやく開けられた目で周囲を見てみる。
明らかに現代とは違う部屋の装飾。
刺繍の施されたカーペット、
カーテン付きベッド、
木製のソファ、
他にも謎の肖像画が飾られた暖炉や、机の上に立てられた羽根ペン等々――。
もう見るからにファンタジー。
っていうか雰囲気が完全にダンプリだし。
家具や小物のデザインなんてそっくり。
ただ……この部屋自体に見覚えはない。
少なくとも作中で主人公が訪れたことはないはずだ。
そもそも、ダンプリには主人公が生まれる描写なんてないぞ。
物語の流れでは、まずプレイヤーが主人公をキャラメイク。
そして遥か遠くの地から『フォルシティ魔導学園』に転校してくる場面から始まる。
だから主人公の出生は語られない――
って待てよ?
……もしかして、俺って――。
「よかった……これでリントヴルム家は安泰だわ……」
俺を生んでくれた母親が微笑んで言う。
はい、たった今確定しました!
どうやら俺は主人公ではありません!
チクショウ!
主人公にはデフォルトネームがある。
"レオン・ニーベルング"
つまりリントヴルムなんて姓ではない。
勿論、名前なんてキャラメイクで変えることはできる。
でも俺は世界観を崩したくない派の人間。
デフォルトネームをそのまま使う主義だから変えなかったんだよ。
それに加えて、ダンプリには"リントヴルム"なんて姓のキャラは登場しない。
物語に関わるメインキャラどころか、サブキャラにも。
少なくとも俺は初耳だ。
以上の情報をまとめると……俺はダンプリ世界の"モブ"として生を受けたっぽい。
悲し過ぎるだろ……。
おおブッダよ……。
――ま、いいけど。
ぶっちゃけ、俺は主人公ムーブに興味ない。
ダンプリのストーリーはよかったけど、一回クリアして観ちゃってるワケだし。
ヒロインたちとの恋愛――はちょっと残念だけど。
皆かわいくて魅力的だったから。
モブに恋愛はムリなので潔く諦めますが。
そんなことより……この世界に転生したからには、やることは一つ。
俺がダンプリでなにより愛しているコンテンツ。
それは"モンスター育成"だ。
特に――”ドラゴン”の育成!
俺はこれに1000時間以上をかけた!
ドラゴン!
このアースガルドで最強のモンスター!
それを卵から孵化させ、
ステータスやスキルを調整しつつ育て、
見た目や戦闘力を自分好みにする!
かわいくするもよし!
カッコよくするもよし!
鍛えまくって強くするのもアリ!
甘やかしまくってフレンドに自慢するのもアリ!
じっくり時間をかけて、最強の生物を育てる快感!
最高!
ひゃっほう!
それにどうやら、俺が生まれたリントヴルム家は裕福な様子。
部屋の感じが貴族っぽいしな。
親にねだればドラゴンの卵を入手できるかも。
ヤバい、今から楽しみになってきた。
早くドラゴン育てたいなあ!
転生したショックなんてなんのその。
俺はダンプリ世界での生活を妄想し、胸躍らせていた。
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