第11話
「ヤレヤレ相当嫌われているらしいな」
誠は一人ごちた。
(けれど、俺に対してだけじゃないのかもしれない。お葬式の時も一人で隅っこに座って誰も寄せ付けない様子だったし、もともと大人しく人と関わるのが苦手なのかもしれないな)
誠は自分の部屋のベッドから掛け布団を持ってきて、そっと貢にかけてやった。
(これは早いうちに布団を買ってきてやらなければ)
明日にでも誠は買い出しに出かけようと思う。
自分に苦手意識を感じている貢になるべくすごしやすい環境を作ってあげたい。
(今日はとにかくもう寝よう)
真夜中寝返りをうつ誠の意識の中に微かに何か呻き声のようなものが聞こえた。
薄目を開けると部屋を襖で一枚隔てたところから声は聞こえてくる。
「貢?」
その呻き声が尋常じゃない気がして誠は暗闇の中で目を開くとそっと起き上がった。
「あぁ……うっ……」
声は何かに抗うように彷徨っている。
襖をそっと開くと掛け布団を蹴散らし、空に対して何か抵抗しているように下肢をばたつかせ首を左右に振っている貢の姿が見えた。
「く、くるしい……いや、いやだ……」
「大丈夫か!」
何かに抗う貢の姿に誠は焦りを感じすぐに戸を開く。 部屋の電気をつけ、彼の元へ駆け寄った。
「たすけて……いっいやぁああ!」
「貢!」
貢の体はすっかり冷えていてそれなのに汗が額に玉のように浮かんでいた。
誠は彼の体を温めるように抱き寄せると名前を呼び続ける。
「しっかりしろ貢!」
彼の大きな体は色白の細い貢の体をすっぽりと包み込んでいる。貢が目を覚ますと懐かしい匂いがした。
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