私達の大好きな貴方〜リフィア視点〜
また倒れてしまった。
私は生まれた時から体が弱く、自分が住んでいる村の近くにある腐敗領域という場所の方から流れてくる風に当てられてよく寝込んでしまっていた。
私が寝込む度に一緒に住んでいるお姉ちゃんがお世話をしてくれて心から感謝しているけれどそれ以上に申し訳ないという気持ちが強かった。
お姉ちゃんの大切な時間を私なんかが奪ってしまってごめんなさい。
前にお姉ちゃんにそう言って謝ったことがあった。
するとお姉ちゃんは自分が好きでやってることだから気にしなくていいと言ってくれた。
だからいつか私が大人になったら絶対に大好きなお姉ちゃんに恩返しをしようと心に決めていた。
そしてもう一人、私の大好きな人がいる。
それは隣の家に住む二歳年上の男の子で名前はエデル・クレイル、私は彼のことをお兄ちゃんと呼んでいる。
私が物心ついた時からお姉ちゃんとお兄ちゃんは一緒にいてくれた。
ある日お兄ちゃんが家に遊びに来ている時に体調を崩してしまったことがあった。その時に横になっている私の手をお姉ちゃんと一緒にお兄ちゃんが握ってくれた。するとその日の夜はいつもの苦しく辛い夜と違って安心の中で眠ることが出来た。私はお兄ちゃんに手を握って貰うだけで元気になれるほどお兄ちゃんのことが好きだったのかと、自分の気持ちに初めて気付いた。
それからというもの私が体調を崩す度にお姉ちゃんがお兄ちゃんを連れてきてくれた。そして三人で眠ることが多くなった。
二人に申し訳ないと思いながらも大好きなお姉ちゃんとお兄ちゃんが側にいてくれるその時間が私は好きだった。
そんなお兄ちゃんは村の男の子達から馬鹿にされていた。お兄ちゃんがこの村で一番弱いというのだ。私はお兄ちゃんを馬鹿にする人たちが嫌いだった。お兄ちゃんが一番弱いのは私のせいなのだ。他の男の子が体を鍛えてる時にお兄ちゃんは私に付き添ってくれていることがほとんどだった。
前にそのことをお兄ちゃんに謝ったことがあった。
するとお兄ちゃんは自分には隠されし力があるから気にしなくていいと言ってくれた。私はその隠された力のことが気になって訊いてみた。するとお兄ちゃんは俺にも分からないと言って困った顔をしていた。きっとお兄ちゃんは私が自分を責めないように気を使ってくれたのだ。
そんな優しいお兄ちゃんがもう少しで十四歳の誕生日を迎えるという時に、私はまた倒れてしまった。
それも今までで一番苦しく体の中で火が燃えているような痛みがずっと続いていた。お兄ちゃんが手を握ってくれている間は痛みも苦しみもなかったけど手を離されると途端に痛みと苦しみが襲ってきた。そのせいでお兄ちゃんが何日もずっと私に付きっきりになっていた。
きっともう私は死ぬのだろうと思っていた。これからずっと私の手を常に握って貰うなんてことは出来ないし、仮に出来たとしてもそれはお兄ちゃんを一生自分に縛り付けるということで、大好きな人相手にそんなことはしたくなかった。
眠っている間ずっとお兄ちゃんの声が聴こえていた気がした。大丈夫、大丈夫とずっと言っているようだった。
お兄ちゃんの私を起こそうとする声が聴こえた。目を覚まして周りを見渡すと不気味な光景が広がっていたけどお兄ちゃんが一緒だったから何も怖く無かった。
そこでお兄ちゃんは黄色い木の実を私に渡してきて食べるように言ってきた。知らない木の実だったけどお兄ちゃんが言うなら大丈夫だろうと一つ食べた。あまり美味しくは無かったし食べた後にすごく眠くなった。でもこれを食べたら治るとお兄ちゃんが言っていた。だからこの体が治ったらお兄ちゃんとお姉ちゃんにどう恩返しをしようか考えていたらまた眠ってしまった。
次に目を覚ました時、お姉ちゃんが私に抱きつきながら泣いていた。目を覚ました私を見てお姉ちゃんや周りの人達はひどく驚いた表情をしていた。
「リフィア!体の調子でおかしいところはない!?」
きっとさっきまで腐敗の毒気にやられていたから心配しているんだろうと思い、早く安心させてあげたかった。
「お兄ちゃんが黄色い木の実で私の体を治してくれたの。これでお姉ちゃんにも恩返しができるよ」
「……………………………………………………………そんな………ウソよ…………私……」
喜んでくれるかと思っていたお姉ちゃんの表情が今まで見たことがないほど青ざめていった。何が起こっているのか分からなくて誰かに説明して欲しかった。
「お兄ちゃん!お兄ちゃんどこ!」
私がお兄ちゃんには何があったのか聞きたくてお兄ちゃんを呼んでいるとお姉ちゃんが吐き始めた。
「お姉ちゃん!?お兄ちゃん助けてー!!お姉ちゃんが!」
お兄ちゃんならきっと私の時みたいにお姉ちゃんを治してくれると思った。だけどお兄ちゃんは来てくれなかった。
何があったのか分からず私も混乱していると、お兄ちゃんを馬鹿にしていた人が話しかけてきた。
「………エデルは……死んだ……いや、俺達が……」
その人が何を言ってるのか理解出来なかった。お兄ちゃんが死ぬはずがない。いつものようにその人が意地悪をしているだけだと思いたかった。
でも私たちがこんなに助けを呼んでもお兄ちゃんが来てくれないことが分かり
私はまた気を失った。
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